釘崎野薔薇の場合


「え、伏黒誕生日なの?」
「そうなの、だから誕生日プレゼント何がいいかなと思って」
「付き合って初めての誕生日なんでしょ?なまえが居るだけで喜ぶわよ」


一緒に過ごしたいのは当然なんだけど、どうやったら喜んでもらえるのかなって考えだしたら驚くほど私は恵くんのことを知らないってことに気づいた。好きな食べ物とか、好きなものとか。読書と一人の時間が好きなのは知ってるけど。

自分で考えてても堂々巡りで、結論が出なかった。だから、私より人生経験豊富な野薔薇ちゃんにアドバイス貰おうと思ったんだけど、野薔薇ちゃんが恵くんのことを知ってるわけなくてあえなく撃沈。


「例えば、なまえなら何が欲しいのよ?」
「うーん、恵くんから貰えるなら何でも嬉しい」
「変な置物でも?」
「嬉しいよ、だって恵くんが選んでくれたんだから」
「伏黒も同じでしょ。なまえが選んだものが一番嬉しいのよ」
「そっか、そうだよね」


野薔薇ちゃんの言葉に納得した。
大切なのは、きっと結果じゃなくて過程なんだって。そりゃあ喜んで貰えたらそれ以上の幸せはないけど。恵くんはきっと私がなにを選んだって「いらない」って言わないと思うし。


「他には?なんかないの?」
「クリスマス近いしペアのなにかにしようかなぁって」
「あ、それいいわね。伏黒となまえにクリスマスプレゼント兼ねてペアのスニーカープレゼントするわ。それ履いて二人で出かけてきなよ」
「え、本当に?いいの?」
「その代わり伏黒の靴のサイズはなまえが聞いてきなさいよ」

そう言って野薔薇ちゃんはスマホを操作して私と恵くんのプレゼントを探し始めた。何色が好き?とか、たくさん履いて欲しいから合わせやすい色とか。私もそんな風に即決出来たらいいのにな、って思いながらまた頭の中で「プレゼントはなにがいいか」の堂々巡りが始まる。


「あと、私がなまえのこと可愛くしてあげる」
「ん?」
「そんなに悩むくらいなら、プレゼントは私!でいいじゃない」
「それは恥ずかしい〜」
「髪も巻いてリボンもつけてあげるわよ」
「可愛くはしてほしい〜〜」
「じゃあ決まりね」


クリスマスコフレ買ったはいいけど、そんなに使う機会ないのよねと言いながら野薔薇ちゃんは私の髪に触れる。美容室で買ったっていうトリートメントもくれた。
次の休みは一緒にショッピングに行ってくれるという。野薔薇ちゃんにもクリスマスプレゼント買おうと心に決めたのは言うまでもない。