五条悟の場合


恵くんへのプレゼントを決められないまま誕生日までのカウントダウンは進んでいく。次の授業で使う呪具を取りに高専の中の長い廊下を歩いていると、グラウンドに向かう恵くんが見えた。100m以上も離れてるのに見つけられるなんてちょっとした才能なんじゃないかな、と思いながら悠仁くんと少し距離を取って歩く恵くんを眺めていた。


「なまえどうしたの?」
「あ、五条先生」
「なに見てんの?あぁ、恵ね」
「そういえば五条先生は恵くんとの付き合い長いんですよね」
「恵が小学生になった頃からだからそれなりにね」


五条先生は昔を懐かしむような表情をしながら答えた。思っていたより長いその時間に、五条先生なら恵くんの欲しいものが分かるんじゃないかなって思って、「もうすぐ恵くんの誕生日なんですけど、なにあげようか迷ってて」と思いを吐露する。


「そんなん私をあげる、でいいじゃん」

返ってきた答えは野薔薇ちゃんと同じものだった。一応、それは私も考えてはいるけど、恵くんってそういうの本当に喜んでくれるかな?そもそも、私がプレゼントって言えるような柄じゃない…


「恵はさ、誕生日祝ってもらうとかそういうの慣れてないから、祝ってあげるだけで喜ぶよ」
「そうですか?」
「最強の僕が言うんだから間違いないって」
「う〜ん」
「最強の僕が信じられない?」
「そうじゃないんですけど」


思いとかじゃなくて、なにか形に残るものをプレゼントしたいんです、そう言うと五条先生は笑って私の頭を撫でた。

「青春だねぇ」
「ちょっとバカにしてます?」
「ううん、うらやましいなぁと思って」


私と同じ目線になるように屈んだ五条先生は、「恵がこれ欲しがってたよって言ったらなまえはそれを選ぶの?」と人差し指を出して問いかけた。きっと参考にするだろうけど、それを選ぶことはしないと思う。首を横に振ると「そういうことだよ」と五条先生は姿勢を正した。


「僕からはサンタコスでもプレゼントしようかな。なまえが着て恵を祝ってあげてくれる?」
「もちろん」
「あ、ツーショ撮って送ってね」
「恵くん写真嫌いだからなぁ」
「なまえがお願いすれば撮らせてくれるでしょ?」


そう言って五条先生はまた私の頭を撫でた。そして嬉しそうに口元を緩ませると「授業遅れるよ」と言って去っていった。