虎杖悠仁の場合


「え、伏黒誕生日なの??!」
「そうなの!」
「いついつ?みんなでパーティやる?」
「えと、付き合って初めての誕生日だから二人で過ごしたいなと思ってる」
「そかそか。それなら別の日にパーティしよう!クリスマスもやろ!」


恵くんが誕生日と伝えると悠仁くんは、令和のお祭り男の称号をあげたくなるくらいノリノリになってくれた。最初から悠仁くんに相談すればよかったんだけど、どうしても悠仁くんに話してしまったらサプライズ失敗しそうな気がしたから。でも、結果、誕生日のことすら知らなかったから話してよかったと思った。


「それでね、誕生日プレゼント迷ってて」
「んーー無難にケーキ?」
「恵くん甘いもの大丈夫かな?」
「そういえばクレープも食べてなかったな。コーヒーもいつもブラックだし…」
「だよね、やっぱり別のものにしようかな」
「けどさー進んで食べないだけで嫌いではないと思うんだよ」


プリンとか、チーズケーキとか、色々とアイディアを出してくれる悠仁くん。一生懸命考えてくれるのはきっと悠仁くんも恵くんが大好きだからだよね。悠仁くんが高専に来てくれてよかった。そう考えてちょっとほっこりしていると、「それならケーキは俺からにするよ」と悠仁くんは言いだす。


「なまえはもっと形に残るものにしたら?」
「…なんで?」
「や、なんか付き合って初めてって言ってたし、形あるものだったら後からでも思い出したりできるじゃん」
「恵くんも思い出したりしてくれるかな?」
「伏黒のことはわかんないけど、俺は目に入ったときとか思い出したりするよ、普通に」
「うん、恵くんもきっと同じだと思う」
「それにさ、伏黒って部屋に物少ないじゃん?きっと目にする回数も多いと思うんだよね」
「うん、わかる」


恵くんは物を大事にする。その分、部屋の中の物が少ない。だからそこに自分の選んだものが置いて貰えたらなって思っていたことを、悠仁くんの一言で気づかされた。特別でありたいんだと、思う。恵くんの中で。だから、こんなに何を贈ったらいいのか迷うし決められないんだ。


「なまえがいいなって思ったのなら伏黒はきっと喜んでくれるよ」
「そうかなぁ〜」
「だってこんなに伏黒のこと考えて悩んでんだから、喜ばなかったら俺が怒る!」
「じゃあがんばんなきゃ」
「ほどほどにな!」


結局、プレゼントはなににするかは決められなかったけど、形に残るものにしようってことは決められたから、あとは自分で考えよう。恵くんもきっとそれを望んでいるだろうから。