2年の先輩たちの場合


燃えるような夕焼けが大地に沈んでいく時間のことだった。
七海さんとの任務を終えて高専に戻ると、ちょうど二年の先輩たちも任務から戻ってきたところで、真希先輩、パンダ先輩、狗巻先輩が車から降りてくるのが見えた。普段は伊地知さんが乗ってるような乗用車なのに、パンダ先輩が居るとファミリーカーになるんだなぁと黒いファミリカーを見て思った。


「なまえ、久しぶりだな」
「はい、真希先輩もお元気そうでなによりです」
「恵ともうまくやってんのか?」
「あ、はい!そういえば、真希先輩って恵と同じ禪院家ですよね?」
「真希にそのこと言うとかなまえ勇気あるな」
「しゃけ」
「その苗字出されるのは好きじゃないが、それがどうした?」
「恵がもうすぐ誕生日なの知ってますか?」

誕生日という言葉を出しても三人はきょとんとするばかり。つまり皆さん知らなかったってことか。「知らなかったなら大丈夫です!」と言葉を続けて、その場から立ち去ろうとすると制服の首根っこを真希先輩に掴まれた。


「なにを聞こうとしたんだよ。気になるじゃねぇか」
「高菜」
「恵にあげるプレゼントが被ったら嫌だなぁって思って探りいれようとしてただけですよ」
「なまえは意外と健気なんだな」
「で、なにやるんだ?」
「それは秘密です」


私の発言に「教えてくれてもいいじゃねぇか」と肩を抱いて因縁をつけてくる真希先輩。ちょっとチンピラみたいって思ってたら、パンダ先輩が「後輩いじめよくないと思いまーす」と言ってくれた。「いじめてねぇよ」って反論されてたけど。


「ていうか、決まってないんですよ」
「そうなのか。じゃあ一緒に考えてやろう」
「すじこ…」
「お、私らからのプレゼント決める?それもいいな」
「恵は意外と動物好きだぞ」
「そうそう、俺の身体もたまに拭いてくれるし」
「呪具の手入れも手伝ってくれるしな」
「こんぶ」
「そうそう寒がりだよな」

先輩たちは本当にたくさん意見を出してくれた。最初から先輩たちに相談しておけばよかったかも。なんとかより年の功って言うし。メモしたい気持ちを抱きつつも、ここにはメモするものも書くものもないので、必死に脳内に叩き込む。


「まぁ、私たちはペアのマグカップにするかな」
「へ?!」
「しゃけ」
「パンダ柄にするのか?」
「しねぇよ!ペアカップつってんだろ」
「ツナツナ」
「二つのカップが揃うとハートになるやつなんかあるのか」
「え、本当にいいんですか?それ私が嬉しい奴なんですけど」
「なまえが喜んだら恵が喜ぶだろ。見てたら分かる」
「しゃけしゃけ」
「それな〜」


真希先輩は自慢げに胸を張った。ペアカップは自分で考えたけど、図々しいかなって諦めたものだった。いや、ハートの柄のは恥ずかしくて使えないから別の柄のがいいけど。貰えたらめちゃくちゃ嬉しい。嬉しすぎて真希先輩に抱き着くと「私らだって後輩が可愛いんだ」と言って笑ってくれた。背中をパンダ先輩がトンて優しく叩いてくれて、狗巻先輩は頭を撫でてくれた。

「高専来てよかったです〜」

涙が出そうなのを我慢して、真希先輩をぎゅうって抱きしめた。「抱きしめる相手間違えてるぞ」とパンダ先輩に言われたけど、気にしない。今は真希先輩が私のヒーローだよ。