それはまるで砂糖のように甘い
「なまえ はかわいいね」
五条先生は距離感がおかしい。今も私を腕の中に閉じ込めて撫で回しているし、初対面で下の名前を呼び捨てにしてきた。
「この状況おかしいと思うんですけど」
「おかしいかなぁ」
「絶対おかしいですよ。恵とか変な目で見てますよ」
「あ、気にする?そういうの」
「気にしない人のほうがおかしくないですか」
一年生が集合している場所に時間通り現れたかと思えば、ゼロ距離で私に構いっぱなしな五条先生は端から見たら100%おかしいし、ロリコンに間違われてもおかしくない。なのに、この男はケロリとそれが普通であるかのようにしてみせるのだからこの場がカオスであることは言うまでもないであろう。
「なら、人の目が見えないとこと行っちゃう?」
「もうそろそろ真面目にやってください」
「え〜〜仕方ないな〜」
この人先生の職務を放棄してるな、と窘めたところで、ようやく話が先に進んだ。野薔薇と恵が揃ってため息を吐いた。うん、わかるよ。私も同じ気持ち。だからと言って、止められる人がいないのもまた事実。
「五条先生さ」
「なんだい悠仁」
「先生、なまえ のこと好きなの?」
お前、空気読めよ!その場にいた悠仁と五条先生以外の全員がそう思ったと思う。私も思った。恵も絶対思ってる。野薔薇なんか青筋浮かんでるし、もう限界ぎりぎりって感じする。つまり、この会話、は や く お わ れ
「好きだよ」
だから終われって!言った!でしょうが!(言ってない)
未だ私を腕の中に閉じ込めたままの先生は私を抱きしめる腕に力を込めて「だから、手出ししないでね」と言葉を続ける。
「あーそっか。ならわかった」
「悠仁も先生ももう黙って」
「なまえ 、鵺使うか」
「私も加勢するわよ」
空気を読まない人間VS空気めちゃくちゃ読む人間が勃発したのは言うまでもなく。五条先生と悠仁は私と恵と野薔薇の殺意に負けて、今日の行程へと進むことになるのであった。