ハニーミルクで溺れたい

夜も更けた深夜１時目が覚めた。
身体は衣服を纏っておらず、横に私を抱きかかえるように眠る悟も素肌のままのようだった。悟と愛し合って、というところまでは覚えている。きっと久しぶりだったこともあり、気を失ってしまっていたんだろう。
悟の鍛え上げらえた胸元に顔を寄せると、薄っすらと悟の瞳が開いて私の姿を確認する。首元に回された手が私の身体を「寝てていいよ」とぽんぽんと叩く。


「みず、のみたい」
「ん、わかった」


慣れたようにするりと腕を抜いて悟が立ち上がる。普段持ち上がっている前髪があるのが気になるのか、髪をかき上げる仕草を繰り返す。それを眺めながら私も起き上がって、床に散らばった下着と悟のオーバーサイズのTシャツを羽織った。悟はここに居ないのに悟の香りに包まれてまるで抱きしめられているみたい。


「はい、冷たいので良かった？」

渡されたペットボトルはキャップが緩んでいて、いつまでもこうして女の子扱いをして貰えることが嬉しくなる。蓋を開けて胃の中に流し込むと、寝ぼけたままの頭が少し覚醒した気がした。


「お礼は？」

悟がベッドの上に腰かけて私を引き寄せる。自分の冷たい唇と悟の暖かい唇を重ねて、ちゅ、とリップ音を立てて口づけた。「これじゃあ足りないよ」と言って、悟が私の腰に手を回したままベッドに倒れこんだ。ふかふかのベッドが二人の体重分だけ沈む。


「これ僕の服？」
「そう、借りちゃった」
「いいけど脱がせていい？もう一回したい」
「やだよ」

ペットボトルをベッドサイドのテーブルに置いて悟の横に寝転んだ。私の視界を遮るように覆いかぶさってきた悟は「やだって言ってもやるけどね」と唇を重ねてきた。ちょっとだけうっとおしそうに顔を背けようとすると頭を押さえつけられる。呪術師なんてアスリートと変わらない。その体力に付き合う体力は一般人の私にはないよ。


「まだやだ？」
「大丈夫、」
「なまえしんどそうな顔してるし、今日はもうやめておこっか」
「お風呂？」
「うん、そういえばシャワーすら浴びてなかったからね」


納得したのかしてないのか、悟は立ち上がった。「ねぇ、悟」と呼び止める。「ん？」と振り向いた悟の表情は柔らかかった。


「もう一回ちゅーしたい」

はいはい、と前髪をかき上げて、ベッドに片手をついた悟の顔が近づいてくる。悟のキスは甘い。甘いもの食べてるからってわけじゃなくて、苦しいキスじゃなくて甘くて優しい私の頭の中をトロトロにしてしまうような、そんなキス。だから何度もキスしたくなるし、ずっとキスしてたくなる。


「もっと、」
「だーめ、止まらなくなるから」
「全然甘えたりないの」
「じゃあ一緒に入る？」
「うん」


本当はもう一回してもよかったんだよ？朝までコースは無理だけど。
「ちゃんと捕まっててね」と言いながら悟が私を抱き上げる。バスルームに運ばれる間も夢見心地だった。さっき覚醒したと思ったのになぁ。

「入浴剤入れる」
「どれにする？」
「ハニーミルク」
「あぁ、それ僕も好き」

知ってるよ。まるでミルクキャンディみたいなその香りに包まれて、私はたくさん悟に甘やかしてもらうの。ちゅ、と悟がまたキスをくれる。ずっとこんな日々が続けばいいのに。甘ったるい幸せが。