2人のつくづく続く日々
「娘、暇だ」
宿儺が現れるのはいつも突然だ。1000年も身体もなく眠ってたのだから暇つぶしくらいいくらでもありそうなものなのに。宿儺は暇でもわたしはそこそこ忙しい。今だってようやく空いた洗濯機に洗濯物を放り込んだところだ。
「暇つぶしなら他あたってくださいよ」
「俺がお前がいいと言っている」
「虎杖に身体返して寝てればいいじゃないですか」
「お前がいるのになぜ寝ておらねばならんのだ」
宿儺はもうとうに1000歳超えてるし、知能も呪力も最強なのに、暇には勝てないんだな。1000年ぶりの現世は楽しい?暇とは言ってもつまらないっては言わないところがやっぱりかわいい。親戚の小学生の子供みたい。「することがない」って親戚の子もよく言ってたっけ。
「ん〜ならなにしますか?」
「交わるか」
「……は?」
「これでもそれなりにモテていたのだぞ。この身があった頃は」
「へぇ」
「腕が4本あったからな、それはそれは女どもは喜んでいたわ」
「聞きたくなかったです、その情報」
移動するわたしの後ろをくっついてくる宿儺。洗濯終わるまでに掃除しなきゃいけないし、ていうか虎杖どうしたのよ。身体乗っ取られてんじゃん。
「小娘、」
「小娘って呼ぶなら返事しない」
「なまえ」
「…今のちょっとグッと来た」
「俺はいつまで待てばいいのだ?」
部屋にたどり着き掃除道具を手にしたところで、宿儺の手がわたしからソレを取り上げた。分かっているのに黒く塗りつぶされた爪に、これは虎杖ではなく宿儺なのだということを再確認させられる。
「暴れもしない、人を傷つけてもいない、いい子にしていただろう?」
「……うん」
「そろそろ俺のものになれ」
ベッドの上に座って宿儺は両手を拡げる。まるで死刑宣告。腕の中を避けて、足を組んで座る宿儺の前に座った。途端に「そこではならん」と怒りを乗せた声が頭上から聞こえる。おずおずと膝の上に乗ると、「いい、それでいい」とわたしの腰に腕を回して抱きしめる。ふいに先ほどまでの会話が脳内に蘇った。「交わる」とかそんな話。
「宿儺のことは好きだけど虎杖の身体だからえっちなことはしないよ」
「解せぬ」
「虎杖が童貞だったらかわいそうでしょ」
「そんなの知ったことではない。そんな他愛のないことで俺となまえの睦事が邪魔されてはかなわん」
相変わらずの宿儺の態度に正直ちょっと笑いかけた。でも、もう少ししたら洗濯も終わるし、今日はちゅーだけで許して欲しい。いつになるか分からないけど、わたしの操は宿儺に捧げるから。
両片思い的な、気持ちを確認しなくてもいいようなそんな関係を書かせていただきました。なんだか宿儺って愛を語ることはしなさそうで、でもサディスティックであって欲しいとの願いを込めて。リクエストありがとうございました!