式神達を封印してからしばらくして、狗巻の肩を借りて眠っていたスズはふと目を覚ました。
その気配に気づいた狗巻が声をかければ、まだボーっとしてはいるが返事が聞こえてくる。
「スズ?大丈夫?」
「…はい、何とか。…あれ、式神…消えてる?」
「うん。式神呼び出してると、呪力がなかなか回復しないからね。代わりに俺が傍にいるって言ったら納得してくれた。」
「そっか…」
「呪力もうちょいだね。膝貸すから、少し横になったら?」
「すみません…ありがとうございます、棘先輩。」
そう言うと、スズはゆっくりと体勢を横にした。
そして狗巻の片足に頭を乗せ、また深い眠りに入っていくのだった。
安心しきった穏やかな顔で完全に体を預けてくる後輩の姿に、狗巻は思わず笑みがこぼれる。
優しくスズの髪を撫でる彼の気持ちが、少しずつ変わり始めていた。
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一方、東堂を足止めしている虎杖の方はと言うと…
自慢のトリッキーな体術で押してはいるものの、東堂には全く効いていないようだった。
その証拠に彼は虎杖の攻撃を受けながら分析し、先輩として後進を育てるべく助言を与えた。
虎杖が繰り出す逕庭拳はトリッキーで威力も十分だが、もっと上の特級相手には通じないと…
「どうする。」
「……俺の全力にドンピシャで呪力を乗せる。」
「good。ではなぜ呪力が遅れるのか…それは呪力を"流して"いるからだ。」
「!?」
自分の言葉を理解できず戸惑う虎杖に、東堂はなおも続ける。
負の感情から捻出される呪力は臍を起点に全身に流すのがセオリーであり、そこから胸を通り肩・腕・拳へと呪力を"流す"のだと。
だがこの体を部位で分ける意識が呪力の遅れを生むのだということも…
「オマエの近くにはいい見本がいるだろ。」
「え?」
「木下スズだ。直接聞いたことはないが、アイツはきっと体に呪力を流そうとはしてない。」
「でもそれじゃ戦えないだろ?」
「木下の場合、呪力を"流して"るんじゃなく、呪力が自然と"流れて"るんだ。」
「!」
「俺達は腹でモノを考えるか?頭で怒りを発露できるか?
いいか、虎杖。俺達は全身全霊で世界に存在している。当たり前過ぎて、皆忘れてしまったことだ。」
「ありがとう、東堂。なんとなく分かった。」
「…もう言葉はいらないな。」
そう言って少し笑みを見せた東堂は、再び虎杖と拳を交えるのだった。
to be continued...
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