パンダとメカ丸、真希と三輪がそれぞれ激しい戦いを繰り広げている頃…

スズと狗巻の周りは驚くほど静かで穏やかだった。

低級呪霊は相変わらず寄ってくるのだが、呪言師の一声で簡単に消え去って行く。

お陰でスズの呪力はぐんぐん回復し、顔色にも赤みが戻ってきていた。

さぁ、きっともうすぐ…!





第37話 京都姉妹校交流会 ー団体戦➄E➆ー





眠りから覚めたスズの視界に最初に映ったのは、優しい顔で自分を見つめる狗巻の姿だった。

まだ頭がボーっとして言葉を発せずにいたスズに、狗巻は笑いながら声をかける。


「スズ〜?目合ってるけど起きてる?」

「…はい、起きてます〜」

「ふふっ。じゃあ…おはよう。」

「おはようございます…私、どれぐらい寝てました?」

「んー…1時間ぐらいかな。」

「1時間……えっ、1時間!?」


思っていたよりも長い時間を告げられ、スズはガバッと体を起こした。

その突然の行動に驚き、彼女を凝視する狗巻。

スズとしては、そんなにも長時間先輩の自由を奪っていたことがショックでならないのだ。


「ごめんなさい…!私、1時間も…足大丈夫ですか?」

「うん、全然。」

「本当に…?」

「本当に。…それよりスズが復活して良かった。」


申し訳なさそうな顔で見つめてくるスズの頭を撫でながら、狗巻はふわっと笑いかける。

そんな彼に、スズは改めてお礼を述べるのだった。


「ありがとうございます…!」

「ううん。俺がもっと早く来てれば、こんな風にならなくて済んだのに…ごめんね。」

「そんな…!棘先輩が来てくれなかったら、私今頃死んでましたから!本当に感謝してるんです!だから…謝らないでください!」

「ふっ…うん、分かった。」


真剣な表情で訴えてくるスズは、狗巻との距離をグッと詰めながらそう言った。

彼女の必死な姿勢に、狗巻からは思わず笑みがこぼれる。

そうして笑顔を向け合った2人は、気持ちも新たに呪霊退治へと出発した。


「…あちこちで戦ってますね。」

「うん。みんな呪霊倒せば勝ちってこと絶対忘れてるよ。」

「確かに。じゃあ私達でサクッとやっつけて終わらせちゃいましょ!」

「だね。」

「それにしても呪霊多いですね〜毎年こんななのかな?」


低級呪霊を倒しながら歩いているスズの呟きに、狗巻は一瞬ツラそうな顔を見せる。

パンダが言っていたことを伝えるか迷う狗巻だったが、知らない方が危険が増すと判断し、彼女にも例の件を話すことにした。

自分と虎杖が狙われているという事実に驚きはしたものの、スズはすぐに気持ちを切り替える。


「お偉いさん達から嫌われるのは慣れてるので、もうどんと来いですよ!」

「怖くないの?あんなに呪力消費させられて…」

「…そりゃ怖さはありますけど、でも大丈夫です!今は棘先輩もいるし。」

「!」


全面的に信頼しているのが分かるスズの笑顔に、狗巻は自分の顔に熱が集まるのを感じた。

それを片手で隠しながら、もう片方の手でスズの手を握って歩き出す。

狗巻の不意打ちの行動に、スズもまた一気に心臓が早くなった。


「行くよ…!」

「は、はい…!あの…棘先輩…」

「この後どれだけ呪霊が来ても、俺が必ず守る。だから…安心してついてきて?」

「! はい…!」


ほんのり赤い顔でこちらを振り返った狗巻は、そう言ってスズに照れくさそうな笑顔を見せる。

五条が見たら確実に不機嫌になるような良い雰囲気のまま、2人は森の中を進むのだった。



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