場所は変わり、ここは敷地内にあるとある建物の中…
赤血操術を術式に持つ加茂を相手に、伏黒は式神を使いつつトンファーで応戦していた。
「同時にもう一種式神を出せるだろ?出し惜しみされるのはあまり気分が良くないね。」
「(玉犬が仕事中だっつーの…)加茂さんこそ、矢ラス1でしょ。貧血で倒れても助けませんよ。」
「心配いらないよ。これらは全て事前に用意したものだ。…君の同期の陰陽師もどきにはできないだろうけどね。」
「…それスズのこと言ってるんですか?」
「他にいるかな?」
「そんな術式使えなくても、アイツは立派な陰陽師ですよ。血筋に縛られてない分、スズの方が自由で伸びしろがある。」
「随分むきになるね。呪力が乱れているよ。」
そう言った直後、加茂は屋根に向かって矢を放った。
そうして落ちてきた瓦礫に隠れながら距離を詰めると、伏黒に強烈な蹴りを喰らわせた。
トンファーで受け何とか凌いだものの、予想以上のパワーに伏黒は焦りを見せる。
加茂の術式は血を操ること…
それは形状や運動だけでなく、体温や脈拍、赤血球などの血中成分までも操れるということだ。
つまり…
「ドーピングか!!」
「よく気づいた。だが俗な言い方はやめてほしいね。」
「ちっ…」
「陰陽師もどきは、こういうことは教えてくれなかったかな?」
「…そんなにスズが気になりますか?」
「…何?」
「アイツの口からは加茂さんの名前なんて1回も聞いたことないです。陰陽師としての格は、スズの方が上なんじゃないですか?」
伏黒が挑発するようにそう言うと、加茂の呪力もまた乱れ始める。
思わぬ形で戦いのカギを握ることになったスズ。
2人の戦いは、まだ始まったばかりだ…!
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さて、森の中を手を繋いで歩いていたスズ・狗巻ペアはというと…?
相変わらず寄って来る呪霊を倒しながら、試合を終わらせるべく二級呪霊を探していた。
と、そんな2人の元へ伏黒の式神である玉犬が駆け寄って来る。
「あっ、黒!」
「何かくわえてるね。」
「本当だ。…ひっ!あれって手首じゃ…?」
2人の前で行儀よくお座りをすると、玉犬は口にくわえていたものを落とす。
それは何者かの手首と、そこに握られていた1つの携帯電話だった。
「これ…メカ丸先輩の手首じゃないですか?」
「そうだね。メカ丸と戦ってたのは…」
「パンダ先輩だと思います。さっきまで2人の呪力が一緒にいましたから。」
「なるほど。じゃあこれはパンダからの贈り物ってことか。…京都校メンバーの番号は入ってるね。今誰か出そうな人いる?」
「んー…呪力的に真依先輩と加茂先輩は戦闘の真っ最中って感じですね。呪力が限りなく弱ってる人を除くと…三輪先輩とかどうです?」
「いいね。ちょうど履歴の一番上にいるし、かけてみる。」
スズが横で見守る中、狗巻はメカ丸の携帯を使って三輪に電話をかける。
そして…
『はい、役立たず三輪です。』
「"眠れ"」
「…いけました?」
その言葉に、狗巻は口角を上げながら携帯をスズの耳に近づける。
スズが耳を澄ませば、電話の向こうからは三輪の穏やかな寝息が聞こえてきていた。
2人は笑顔でグータッチをすると、今度は玉犬に向き合う。
「黒、ありがとね!恵によろしく!」
「ワフッ」
「"戻れ"」
狗巻の一声で、玉犬はパシャっと姿を消した。
無事に一仕事を終えたスズと狗巻は再び呪霊探しを開始しようと歩き始めた…のだが。
突如漂ってきた凶悪な気配に揃って背後を振り返る。
そのあまりに禍々しい力に、狗巻はスズを後ろに庇って戦闘態勢に入った。
スズもまた、いつでも術式を発動できるよう態勢を整える。
そして現れた呪霊のレベルをスズは瞬時に判断した。
「嘘…準1級!?」
「スズ、絶対俺より…」
"俺より前に出ないで"
狗巻がそう言い終わらないうちに、準1級呪霊は白目を向いたまま首を切断されていた。
唖然とする2人の前に次に姿を見せたもの…
それはスズにとっては見覚えのある、目から枝が生えた謎の特級呪霊だった。
「さて、俺らも仕事を始めよう。」
屋根の上でそう言葉を放つ、真人と呼ばれていたツギハギ呪霊。
交流会に暗雲が漂い始めていた…
to be continued...
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