花御の攻撃から逃げながら、スズ達4人は建物内をひた走る。

中でも既に何回か相手の攻撃を呪言で止めている狗巻は、その疲労と呪力消費が激しかった。


「大丈夫ですか、狗巻先輩。」

「しゃけ。」

「(さっきから走りっぱなしでまともな治療ができない…!)」


ノドナオールを飲みながら前を走る先輩に目をやると、スズは悔しそうに拳を握った。





第41話 時間





一番後ろを走っていた加茂が敵の気配を察知し、声を上げる。

他の3人が振り向けば、そこには何か種子のようなものがついた枝をこちらに向ける花御がいた。


「来るぞ!!」

「棘先輩、1回休んでください!私が「スズ!!」

「! 恵…!?」

「"止まれ"」


狗巻の一声で攻撃が止まった隙に、加茂が赤血操術で花御の目から生えている枝に傷をつけた。

だが悠長にしている暇はない。

2本目のノドナオールを飲みながら走る狗巻を先頭に、4人はまた走り始める。

そんな中、狗巻を休ませるために自身の式神を出そうとしたスズは、自分の行動を止めた伏黒に声をかけた。


「恵、何でさっき止めたの?」

「…この戦い、俺らはたぶん無傷では終えられない。」

「!」

「それどころか相当な傷を負うかもしれない。そうなった時、スズの治癒能力は絶対不可欠なんだ。」

「恵…」

「だからオマエには出来る限り呪力を温存しておいて欲しい。アイツの相手は俺らがするから。」

「…」

「スズの気持ちは分かってる。これが俺のワガママだってことも…でも…!」

「うん、分かった!私はそこまで考えられてなかったから、恵に止めてもらえて良かったよ。ありがと!」

「スズ…悪いな。頼む。」


笑顔を見せるスズの頭にポンと手を置いた伏黒は、自身もまた少し笑みを見せる。

そうして2人は、前を走る先輩達に続いて足を速めるのだった。



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