呪具---それは呪いを宿した武具。
その威力・効力によって術師同様4〜1の等級に分けられており、等級の高い呪具ほど呪術戦において大きなアドバンテージになる。
真希が手に取ったのは、その中でも数少ない特級呪具・游雲だった。
生まれ持った身体能力と合わせた一撃は、花御の体を遥か遠くの森の中へと吹っ飛ばした。
第42話 呪具
狗巻と加茂のことをスズに任せると、真希はいち早く敵の後を追う。
伏黒も同級生に一声かけてから同様に動き出そうとしたのだが…
「スズ、棘達のこと頼んだ!恵、行くぞ!!」
「はい!じゃあスズ、オマエも十分気をつけろよ?」
「うん、ありがと!…あ。待って、恵!」
「ん?」
背を向けた途端に名前を呼ばれ振り返ると、スズの両手が頬に触れる。
同級生の突然の行動に、今の状況も忘れ、顔に熱が集まる伏黒。
だがすぐに温かな呪力が体を駆け巡るのを感じ、スッと自然に目を閉じた。
「…ん、これで良し。」
「!」
「加茂先輩との戦いでだいぶ呪力消費したでしょ?だから少し補充しといた!」
声に反応し伏黒が目を開けると、自分を笑顔で見つめるスズと目が合った。
戦いの真っ只中とは思えないその優しい表情に、今度は心臓に熱が集まり音を立てる。
この心臓を騒がしくしてる感情が今は必要じゃないこと…
1秒でも早く真希の後を追って、敵と戦わなければいけないこと…
いつだって冷静な式神使いは、そんなこと全部分かっている。
でも、どうしてもスズに背を向けることができなかった。
「恵?どした?」
「…悪ぃ、スズ……10秒だけ肩貸して。」
そう言うとスズの返事を待たずに、伏黒は彼女の肩に頭を乗せる。
急な接近にアワアワするスズの気配を感じて少し笑みを漏らした伏黒は、きっかり10秒後に頭を上げた。
そして思っていた通りの表情をしている同級生の頭にポンと手を置く。
「ありがとな。行ってくる。」
「あ、う、うん!また後でね!」
「おう。」
気合いの入った良い顔でそう言った伏黒は、真希の後を追って建物の向こうへ消えた。
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伏黒を見送ると、スズはすぐさま領域展開をして治療を始めた。
横たわる2人の間に座り、加茂は主に顔を、狗巻は喉を中心に呪力を当てていく。
と、不意にスズの服が引っ張られた。
そちらに目をやれば、うっすらと目を開けた狗巻の姿が…
「棘先輩…!」
「スズ…」
「あ、喋っちゃダメです!安静に…!」
「うん…ありがと。」
小声でそう言うと、狗巻は少し笑みを見せてから目を閉じた。
そして意識が戻ったことに安心したスズもまた、穏やかな表情になるのだった。
そんな彼女の元に、空から援軍が駆けつける。
「スズちゃん!」
「あ、西宮先輩!!」
「そっちの2人大丈夫なの…?」
「応急処置は終わってます…!棘先輩の方はさっき意識が戻りました。硝子さん、待機してくれてるんですか?」
「(すごい…!もっとボロボロの状態を想像してたのに…パっと見は寝てるようにしか見えない。)
あ、うん!帳のすぐ外にいてくれてるみたいだから、そこまで連れてく。」
「お願いします!」
「スズちゃんは?一緒に行く?」
「私は恵達の方に…!さっきからあっちの呪力が弱ってきてるんです。」
「(そういうのが普通に分かるんだ…!)了解。じゃあそっちはお願いね。」
「はい!!」
西宮の愛用している箒に2人を乗せると、スズは彼女と別れ伏黒と真希がいる方へと向かった。
だがその途中、スズは例のブラザーコンビと遭遇することになる。
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