「うわっ…!!」
「成ったな。」
スズと東堂が見守る中、虎杖はついに"黒閃"を出すことに成功した。
当の本人はと言えば、"黒閃"が出たことよりも、今自分の体に起きている変化の方に驚いているようだった。
第44話 窮屈〜予感〜供花
「悠仁、やってくれましたね。」
「あぁ。まぁ虎杖ならやってくれると思っていたがな。」
「ふふっ。…じゃあ私も自分の持ち場に行きます。悠仁のこと、引き続きお願いします!」
「任せておけ。」
今までと違う体の感覚に呆然としている虎杖を、2人は何とも嬉しそうな表情で見つめていた。
だが戦いがまだ終わっていない以上、いつまでものんびりはしていられない。
スズは救護班に加わるため、虎杖を東堂へ託し、その場を後にしようとした…のだが。
「待て、木下。」
「? はい。」
「オマエ、"黒閃"を出したことは?」
「ないですよ!出せそうに見えます?」
「見えないな。だが理論的に言えば、狙って出せる唯一の術師だと思っている。」
「えっ…!」
「今度オマエの師匠に聞いてみろ。」
そう言って、東堂はさっさと虎杖の元へ向かってしまう。
残されたスズはいろいろ考えを巡らせようとしたが、今はそれどころじゃないことに気づき、自身もまた持ち場へと走り出した。
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家入の呪力を探しながら森の中を走ること数十分…
スズは無事に"帳"の端へと辿り着いた。
恐る恐る手を伸ばしてみれば、さっき東堂が言っていた通り、何の抵抗もなく外気に触れることができた。
そのまま一気に体を通し外に出ると、待ち構えていたかのようなタイミングで声がかかる。
「出れた…!」
「スズ、こっち!」
「あ、硝子さん!遅くなってすみません!」
「ううん。スズの応急処置のお陰で、みんな一旦は落ち着いてる。ありがと。」
「いえ…!まず全体に領域展開する感じで良いですかね?」
「そうだね、お願い。ただ無理はしないように。」
「押忍!」
簡易的な救護所には、特級呪霊にやられた重傷者が数名寝かされていた。
その全員を包み込むように、スズは領域を展開する。
これで比較的軽い傷やケガは勝手に治っていくため、家入とスズは分担してそれぞれの重症箇所を治療していくのだった。
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