五条がド派手な技を放ってから数分後、高専の敷地内に点々と存在していた邪悪な呪力が全て消えた。
だが辺りは落ち着くどころか、徐々に混乱と慌ただしさの度合いが増してきていた。
「悟!今回のことについて緊急の会議だ。行くぞ。」
「え〜それ僕も行かなきゃダメなんですか〜?」
「スズ!ちょっと患者増えたからこっち来てもらっていい!?」
「はい!すぐ行きます!」
五条は夜蛾から、スズは家入からそれぞれ声がかかる。
どちらも急ぎの用事であり、この後しばらく2人は別行動になることが確定していた。
第46話 完遂
握っている手を離したくないのが分かりやすく顔に出ている五条。
呼ばれた方へ動き出そうとするスズの手を今一度強く握ると、少し自分の方へ引き寄せる。
そして周りの人に聞こえないよう早口で用件を告げた。
「スズ、今日俺の部屋来れる?」
「はい、大丈夫です。何時頃行けばいいですか?」
「んー…じゃあ19時頃にしようかな。何かテイクアウトして、一緒に飯食お?」
「分かりました!…ご飯食べるだけですか?」
「(! そういう意味じゃないって分かってるけど、相手がスズだと期待しちゃうんだよな〜)…積極的なスズちゃんは、俺に何かして欲しいことがあるのかな?」
「ち、違います!そうじゃなくて…!」
「冗談だよ。…会議で出た話を共有したい。」
「あ、なるほど…!了解しました!」
"じゃあまた後でね"
夜蛾から再度名前を呼ばれ嫌な顔をした五条は、そう言ってスズの頭をポンとしてから立ち去った。
その後すぐ、スズもまた家入の元へと急ぐのだった。
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家入の手伝いが終わると、スズは同期2人と合流し伏黒のお見舞いへと向かった。
病人への差し入れにしては重過ぎるピザを手土産に…
「伏黒〜起きてっか〜?」
「ピザ持って来たから開けなさいよー!」
「……結構重症だったし寝てるかもね。また後で来よっか。」
「待って。…伏黒〜スズもいるわよ〜」
「……鍵開いてる。」
スズの名前が出た途端、それまで静かだった室内から小さく主の声が聞こえてくる。
"おおっ"と驚く2人に得意げな表情を向ける釘崎を先頭に、彼女達は部屋の中へと入って行った。
ベッドの上にピザを乗せ、それを囲むように3人はイスを持ち寄る。
病人である伏黒も体を起こし、起き抜けのピザを無表情で食べていた。
「アンタ、いつの間にあのゴリラと仲良くなったのよ。」
「いや、仲良くなったつーか…記憶はあんだけど、あの時は俺が俺じゃなかったというか…スズ、俺何か変だったよな?」
「変過ぎてどっからツッコんだらいいか分かんないぐらいだったよ。」
「何アンタ酔ってたの?」
「釘崎は俺があの状況で酒を飲みかねないと思ってるの?ショックなんだけど…」
「まぁ飲んでるって言われてもしょうがないよね、あれは。」
「ほら〜」
「スズまで何だよ〜」
とても見舞いに来たとは思えないレベルの雑談を繰り広げる同期達に、伏黒は終始呆れ顔だ。
だがその雑談に区切りがつくと、ようやく彼を気遣う言葉が聞こえてくる。
「でもまぁ伏黒の怪我が大したことなくて良かったな。ピザも食えてるしなっ!!」
「あの時スズが俺の呪力を0にして、すぐに根を取り除いてくれたお陰だ。ありがとな。」
「どういたしまして!無事で何より。」
「へーそういうこともあんのか。」
「アンタ、ソイツと闘ったんでしょ?」
「親友と一緒に集中してたから何も覚えてないんじゃない?」
「それ言うなってー!」
やいのやいのと会話を続ける3人を他所に、伏黒の表情は浮かない。
そして何かを思い詰めたような顔で、虎杖へと声をかけるのだった。
"強くなったんだな"…と。
「あの時、俺達それぞれの真実が正しいと言ったな。その通りだと思う。逆に言えば、俺達は2人共間違ってる。」
「答えがない問題もあんでしょ。考えすぎ、ハゲるわよ。」
「そうだ、答えなんかない。あとは自分が納得できるかどうかだ。」
「恵…」
「我を通さずに納得なんてできねぇだろ。弱い呪術師は我を通せない。俺も強くなる。すぐに追い越すぞ。」
「ハハッ!相変わらずだな。」
「私抜きで話進めてんじゃねーよ。」
「ふふっ。じゃあ皆で頑張らないとね!」
「それでこそ虎杖の友達だな。」
突如聞こえてきた5人目の声。
1年ズが視線を向けた先には、腕を組み"うんうん"と頷く東堂葵の姿があった。
彼の存在を確認した瞬間、虎杖は弾かれたように部屋を飛び出していく。
一方的な強い友情を大声で叫びながら彼を追いかける東堂。
彼らの追いかけっこを、残された3人は呆然と見つめるのだった。
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