スズ達が伏黒のお見舞いでワイワイと過ごしている頃…

五条をはじめとする教師陣は、今回の騒動について緊急の会議を開いていた。

補助監督である伊地知からの報告は、何とも悲惨なものだった。


「…続いて人的被害です。2級術師 3名、準1級術師 1名、補助監督 5名、忌庫番 2名。

 高専に待機していた術師で、五条さんや夜蛾学長と別行動だった方達ですね。

 家入さんからの報告待ちですが、以前七海さんが遭遇した呪霊の仕業でほぼ間違いないかと。」

「チッ(…でもだとしたらスズも接触してるよな。あとで話聞いてみるか。)」

「この件って、学生や他の術師と共有した方がいいですかね。」

「…いや。」

「上で留めておいてもらった方がいいだろう。呪詛師界隈に特級呪物流出の確信を与えたくない。捕らえた呪詛師は何か吐いたか?」


この呪詛師というのは、五条が手足をグシャグシャにしたあの坊主頭の男だ。

伊地知によれば、いろいろと喋っている割には要領を得ない発言が多いようで…

聞き出せた情報はとても断片的なものだった。


「性別不詳のオカッパ坊主のガキんちょ…心当たりは?」

「なーし。適当こいてるだけじゃない?自白に強い術師いないの?」

「そもそもなんで呪霊や部外者が天元様の結界抜けられたのよ。」


スズと狗巻が遭遇し、虎杖と東堂が相手をしたあの花御という呪霊。

五条曰く、特殊な気配を持ったこの呪霊は限りなく精霊に近く、植物に潜り込んで侵入したとのこと。

だがその目的について、五条はどうにも腑に落ちないようだった。


「(宿儺の指による悠仁の潜在能力ポテンシャル強化を危惧したのか…?

 それとも呪霊達の強化目的か…スズが誘拐された件とも関係あるかな…)」

「とりあえず今は学生の無事を喜びましょう。」

「フム…」

「悟、分かってるとは思うが…今までの話スズにはするなよ。」

「……はいはい。」

「今の間は何だ。絶対に言うなよ。」

「分かってますよ〜」


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「…っていう内容の会議だったわけ。」

「なるほど…で、先生。」

「ん?」

「今の話、私に言ってもいいやつですか?」

「ううん、ダメなやつ。学長から直々に禁止された〜」

「やっぱり…もう!また先生怒られちゃうじゃないですか!」


時間は流れ、ただいまの時刻は20時ジャスト。

テイクアウトした中華料理を食べ終えた五条は、まだモグモグと口を動かしているスズ相手に会議の内容をすっかり話し終えたところだ。

終始静かに聞いていたスズだったが、全てを聞き終えたタイミングでガバッと立ち上がり大きな声を上げる。

一方の五条はと言えば、座ったまま穏やかな表情をスズに向けていた。


「俺そういうの気にしないから。それよりオマエに隠し事する方が嫌だし。」

「…でも先生が皆にいろいろ言われたり、嫌われたりするの嫌です。」

「別にいいよ、他の奴のことはどうでも。…俺はスズにだけ良く思われてればいい。」

「! …何か今キュンとしました。」

「おっ。スズの彼氏に一歩近づいた?」


五条からの強い言葉を受け、スズは力が抜けたようにペタンと座り込んだ。

そんな想い人の姿に、五条は嬉しそうに顔を近づける。

"近いです…!"といつものように動揺するスズを面白がりながら、買っておいたアイスを取りに行く五条。

そしてそれを食べながら、また2人は会話を始める。


「スズ、七海が前に戦ったツギハギの呪霊と接触したことあるよな?」

「はい。確か…真人っていう名前で、魂の形を変える術式だったはずです。」

「魂の形を変える、ね……でもスズと悠仁には効かないか。」

「すごい!何で分かったんですか?」

「それは俺が最強だから〜」

「…答える気ないじゃん。あ、私も1つ聞いていいですか?」

「もちろん。」

「東堂先輩に言われたんですけど、私って"黒閃"打てる可能性あるんですか?」

「あるよ。その気があれば今すぐでも打てると思う。」

「えっ、嘘…」

「嘘じゃないよ。だって"黒閃"は打撃と呪力の誤差が限りなく少ない時に発生するんだよ?常に体に呪力が流れてるスズなら、誤差なんてないでしょ。」

「で、でも今まで打てたことないですよ?」

「それは俺がスズに"黒閃"を意識させないようにしてたから。」

「何か意図があってですか?」

「うん。"黒閃"は威力がすごい分、体への影響も大きい。低級呪霊相手に"黒閃"打って、スズの体がぶっ壊れるのが嫌だったの。」

「なるほど…また守ってくれてたんですね。」

「当然でしょ。だから強い相手に、しっかり意識して打つなら打ってもいいよ。今度、俺相手に練習してみよっか。」

「はい!お願いします!」


まだ自分に強くなれる要素があると知り、嬉しそうに師匠を見つめるスズ。

その真っ直ぐな目と熱意に、五条はまた彼女への想いを募らせるのだった。



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