それは事件後の緊急会議でのこと…


「悟、分かってるとは思うが…今までの話スズにはするなよ。」

「……はいはい。」

「今の間は何だ。絶対に言うなよ。」

「分かってますよ〜」

「全く…だが交流会は言わずもがな中止ですね。」

「ちょっと、それは僕達が決めることじゃないでしょ。」


五条のこの一言に、他の面々は揃って頭に"?"を浮かべた。





第47話 呪術甲子園





生徒達の回復のため1日休みを挟んだ翌日。

東京校と京都校のメンバーが、敷地内にある建物に集められた。

皆の前で話すのは、我らが破天荒教師・五条悟だ。


「っつーわけでさ、色々あったし人も死んでるけどどうする?続ける?交流会。」

「うーん…どうするって言われてもなぁ…ね?」

「そうだよね…どうしようか…」

「当然、続けるに決まっているだろう。」


師匠からの問いかけに、揃って頭を悩ませるスズと虎杖。

そんな2人を他所に、続行を強く主張したのは虎杖の自称親友・東堂だった。

机に脚を乗せ、腕を組みながら発言を続ける彼の姿に、虎杖はサッとスズの後ろへ隠れる。


「で…でた!!」

「ふふっ。悠仁、ビビり過ぎだから。」

「その心は?」

「1つ。故人を偲ぶのは当人と縁のある者達の特権だ。俺達が立ち入る問題ではない。

 2つ。人死にが出たのならば、尚更俺達に求められるのは強くなることだ。後天的強さとは"結果"の積み重ね。

 敗北を噛みしめ、勝利を味わう。そうやって俺達は成長する。"結果"は"結果"として在ることが一番重要なんだ。」

「(交流会の時も思ったけど、ちゃんとまともなことも言うんだよな〜東堂先輩って。)」

「3つ。学生時代の不完全燃焼は死ぬまで尾を引くものだからな。」

「オマエいくつだよ。」

「実は悟先生より上なんじゃないですか?」

「ね〜」


達観したような東堂の発言に、他の生徒達もそれぞれ賛同の意を示す。

交流会の2日目は毎年個人戦であるため、真希は組み合わせについて五条に尋ねるのだが…


「え。今年は個人戦やんないよ。」

「「「!」」」

「僕ルーティンって嫌いなんだよね。」


そう言いながら小さな箱を虎杖へ投げると、五条は近くにいたスズの頭に手を置いて寄りかかる。

箱の中には勝負方法が書かれた紙が入っており、毎年交流会当日に開けることになっているのだ。

虎杖が箱の中から取り出した紙には、小さなボールのイラストと共にある文字が書かれていた。


「や…」「野球っ〜〜??」

「うおっ!!いたの!?」

「…先生、やりましたね?」

「楽しそうでしょ?スズも好きじゃん、こういうの。」

「…まぁ、楽しみではあります。」

「良かった!…てことで、俺はこの辺で。また後でね。」


スズに小声でそう言うと、五条は口笛を吹きながら上機嫌で建物を出て行った。

その直後、夜蛾の叫び声がすぐに飛んでくるのだった。



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