会場や道具、ユニフォームの準備を整え、生徒達は賑やかにグラウンドへと飛び出してきた。

時刻は13時---姉妹校交流会 2日目の野球大会が幕を開けた。

主審に五条を迎え、京都校が先攻でゲームスタート!

1番の西宮が塁に出るものの、2番の三輪がフライを打ち上げダブルプレー。

続く3番の加茂は1回もバットを振ることなく三振でアウト。

あっという間に攻守交替となった。


「東京校ファイトー!!」

「「「おう!!」」」


スズの掛け声で全員が気合いを入れると、1番の釘崎がバッターボックスへ向かう。

伏黒の隣に座り、ベンチから声援を送るスズの顔はとても楽しそうだった。


「野薔薇、打ってけー!!」

「おうよ!!東北のマー君とは私のことよ。」

「東北のマー君はマー君だろ。」

「マー君投手だぞ。」

「おかか!」


仲間のヤジを無視して打席に立った釘崎だったが、マウンドにあるモノを見た途端声を荒げる。

そこにはピッチャー・メカ丸と称した、どこからどう見てもピッチングマシーンと言えるモノが置いてあったのだ。

1回裏からいきなり乱闘騒ぎで波乱の幕開けとなったわけだが、スズの顔はさっきよりも更にキラキラと輝いていて…!

それを遠目で見ている五条もまた、笑みを浮かべるのだった。


「オラァ!!やってやんよぉお!!」

「おっ、出塁した。」

「ヤケクソだな。」

「ナイスバッティン、野薔薇ー!!ほら恵、次でしょ!準備、準備!」

「ふっ。はいはい。」


ピッチングマシーンの球を何とか打ち返した野薔薇が出塁し、続く伏黒が送りバントで彼女を進塁させる。

3番のパンダが見事なヒットを打ち、打順は4番の真希へ。

一発出れば3点という場面で、彼女は期待通りの大きな当たりを打ったのだが…

箒に乗った西宮がいとも簡単にキャッチし、飛び出していた釘崎とパンダも揃ってアウトとなった。


「だーっ!!西宮先輩の術式強っ!!」

「うわあぁあ!せっこ!!」

「おかか!!」

「釘崎戻れー。」


迎えた2回表。

打席に立った東堂がまたも虎杖に絡みいろいろと話していたが、それを一蹴するように真希が投げたボールが彼の顔面にめり込んだ。

だが心配しているのは虎杖だけで、彼以外のメンバーはそれぞれピッチャーへ賛辞を送っている。


「東堂…っ、オマエ…!!(ムチャクチャ嫌われてるな…)」

虎杖ブラザー…」

「ちょ、ちょっと待ってろ。…スズー!!」

「ふふっ。はーい!」


一連の流れを終始面白がっていたスズは、虎杖に呼ばれた際もニコニコしながら向かって行った。

そして虎杖と笑顔で話しながら、東堂に対し簡単な治療を施すのだった。

そんな学生達の様子を静かに見守っていた夜蛾と楽巌寺。

話題の中心は今自分達の目の前で楽しそうに会話をしている2人の人物…


「…まだ虎杖と木下が嫌いですか。」

「好き嫌いの問題ではない。呪術規定に基づけば、虎杖は存在すら許されん。」

「木下はそこまでの存在ではないのでは?」

「…彼奴あやつは特級呪物に気に入られているらしいな。風の噂で聞いたぞ。」

「それだけで命を狙うんですか。」

「気に入られているということは、木下の思惑次第では呪術界が危険に晒されるということだ。

 2人が生きているのは五条の我儘。個のために、集団の規則を歪めてはならんのだ。

 何より虎杖と木下が生きていることで、その他大勢が死ぬかもしれん。」

「だが彼らのおかげで救われた命も確かにある。現に今回、虎杖は東堂と協力し特級を退けた。

 木下だってそうです。彼女の治癒能力がなければ、学生達は今頃もっと酷い状態になっていたでしょう。」


そして夜蛾は続ける。

学生達はこれから多くの後悔を積み重ねる。

2人についての判断が正しいかは分からないが、今は見守らないか…と。


大人わたしたちの後悔はその後で良い。」



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