試合が終わると、学生達に待っているのは後片付けだ。

グラウンドの整備、バッドやボールの回収と倉庫への運搬などなど。

疲れた体に鞭打って、各自が手分けをして作業を進めて行く。

そんな中、スズはボールが大量に入ったケースを倉庫へ運ぶ係に…


「(うわ〜何で私がこれ運ぶ係なの?もっと軽いのあったよね?)」

「手伝うよ」

「棘先輩!ありがとうございます!いいんですか?」

「もちろん。一緒に行こ」


他の人に聞こえないよう小声でそう言った狗巻は、少し笑みを見せるとケースの片側を持ってゆっくりと歩き出す。

今日の試合のこと、最近の任務のこと、普段の生活のこと…

何気ない会話を楽しみながら倉庫へ到着すると、ケースを片付け、無事にミッションクリアとなった。

すっかりヘロヘロになった2人は、途中にある自販機で飲み物を買って休憩することに。


「スズ、オレンジジュースでいい?」

「はい!ありがとうございます!」

「…子供」

「…棘先輩だって相変わらずファンタグレープじゃないですか」


すっかりお馴染みになったやり取りをすると、スズと狗巻は揃って笑顔を見せた。

それからベンチに座り、またのんびりと会話をする2人。

と、不意に狗巻が自分がかぶっているキャップをスズの頭に乗せた。

突然のことに驚いたスズが彼の方に顔を向けると、とても穏やかな笑顔がそこにあった。


「棘先輩…?」

「…好き」

「へ?」

「俺、スズのこと好きになっちゃった」

「! え、あ、えっと…その…!」

「突然ごめん。でも俺…もうスズのことただの後輩に思えないんだ」


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-side 狗巻-

最初は、呪言が効かない不思議な子だなって…それだけだった。

もちろん驚いたし、おにぎりの具以外で誰かと会話できることは嬉しかったけど…

でもそこにそれ以外の特別な感情はなかった。


それから何回か一緒に任務に行くようになって、術式的にもすごく相性がいいってことが分かった。

スズと一緒だと周りを気にしないで呪言が使えるし、自分の体もビックリするぐらい楽なんだ。

任務が終わったら当たり前のように俺のケガを治してくれて、甘いものを食べに誘うと必ず笑顔で付いて来てくれる。

そんなことを続けていくうちに、いつからかスズの傍にいると安心している自分がいた。

でもこの時もまだ特別な感情はなかったと思う。

信頼できる後輩、優しい妹みたいな存在…そんな感じ。


自分の中の感情が大きく変わったのは…今回の交流会だ。

スズが上の人間から疎まれて大量の呪霊に襲われ、呪力が空っぽになるぐらいまでやられて…

誰がどう見たって理不尽なやり方なのに、それに耐えて、負けないように頑張ってる。

ひねくれたり、自暴自棄になったり、そういうマイナスな方向には全く傾かない。

常に前向きで明るくて、優先順位はいつも自分より周りの人の方が上。

そういう性格のスズが、どうしようもなく愛おしいと思ったんだ。

だから俺を信頼して膝で眠ったり、"棘先輩もいるし"って向けてくれた笑顔が嬉しくて…

"スズを守りたい"

今までにないぐらい、強くそう思った。

それが"好き"って感情になるまで、ほとんど時間はかからなかった。


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「返事はすぐじゃなくていい。俺がスズを好きな気持ちはこの先ずっと変わらないから、スズの中で整理がつくまで待ってる」

「先輩…」

「…負担になっちゃうかな?」

「! そんなことないです!むしろ申し訳なくて…今まで先輩の想いに全然気づかなかったです…」

「俺が全然表に出してないんだから、そんなの当然だよ。だからスズは何も気にすることない」

「…棘先輩、優しすぎませんか」

「ふふっ。そりゃそうでしょ…好きなんだから」


優しくスズの頭を撫でると、狗巻はそう言ってキレイに笑った。

なかなか顔の赤さが引かないスズと、とても幸せそうな表情の狗巻。

そんな2人を包み込むように、夕日が辺りを照らしていた。



第2章 fin.



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