「皆〜ちょっと集まって〜」

「何、先生?」「どうしたんですか?」

「僕、今日から1週間任務でいないから!っていう連絡。」

「「えっ!」」

「皆は4人一緒の任務が入ってたよね?僕いないけど、何とか頑張って。」


虎杖とスズだけが反応を示す中、五条はいつもの軽い感じでそう言った。





第48話 起首雷同





それから五条は持っていた2つのスーツケースの内の1つをスズに渡す。

ポカンとする彼女に、迎えが来る校門のところまで一緒に持ってきて欲しいと五条は可愛くお願いをした。


「え〜こんな軽いの「いいから。ね?」

「(すごい圧を感じる…!)は、はい!」

「じゃあ新田さんと連絡取って、出発時間分かったらLINEするわ!」

「ありがと野薔薇!お願い!」

「じゃあスズ、また後でな〜!」

「うん、後でね!」

「…早く来いよ。」

「了解!」


明るく元気な虎杖や釘崎と違い、終始静かなままの伏黒。

最後に別れる時も、スズに見せた笑顔はどこか影のあるもので…

伏黒が自分に向けた視線に気づいた五条は、彼だけに分かるよう少し笑みを向けるのだった。


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スズと2人になった途端、五条は目隠しを外して一気にリラックスモードに。

有無を言わせない圧力で連れてこられたものの、こんなに軽いスーツケースを自分が運ぶ意味が分からないスズ。

何故か上機嫌な師匠に、彼女は横を歩きながら声をかけた。


「先生、このスーツケース中身入ってます?」

「入ってないよ。それはお土産入れる用〜」

「えっ、そんなに買う予定なんですか?」

「何か今回あちこち行くことになりそうだからさ、たくさん買ってこようと思って!」

「そうなんだ〜!」

「だから楽しみにしてて。」

「はい!でも前も言いましたけど、悟先生が無事に帰ってきてくれるのが一番ですからね?」


そう言って笑顔で自分の顔を覗き込んでくるスズに、五条は足を止め彼女と向き合った。

そして穏やかに微笑みながら、ゆっくりと話しだす。


「俺がさ、何でスズにスーツケース運んでもらったか分かる?」

「あ、いえ…聞こうと思ってました。」

「出発前にスズと2人になりたかったからだよ。」

「!」


思いがけない言葉に目を見開くスズを面白がりながら、五条は優しく彼女を抱き寄せる。

だがすぐにその力を強くすると、深く息を吐いた。


「先生…?」

「今日から1週間もスズに会えないとか…耐えられる自信ない。」

「そ、そんな大げさですよ…!」

「大げさじゃねーよ。あー…何か行きたくなくなってきた。やめよっかな。」

「ダメです!先生にしかできない任務なんですから。」

「…は〜い。じゃあ頑張るから、帰ってきたら俺との時間たくさん作って?」

「え、あ、わ、私で良ければ…!」

「約束な。…あ、そうだ。せっかくなら…俺、スズとデートしたい。」

「デート!?私、行ったことないんですけど…!」

「うん、知ってる。初めてが俺とじゃ嫌?」


熱っぽい目でスズを見つめながら、色っぽくそう言う五条。

赤い顔で声も出せず、"そんなことない"という意味を込めて勢いよく首を振る想い人の姿に、彼は途端に笑顔になるのだった。

そんな中で聞こえてくる、五条を呼ぶ補助監督の声。

誰が見ても嫌がってると分かるような表情を見せながら、五条は"今行く〜"と返事をした。


「じゃあ行ってくんね。」

「行ってらっしゃい!気をつけて!」

「ありがと。スズも任務気をつけろよ。何かあったら必ず連絡すること。」

「了解です!」

「…あーやっぱ行きたくないー…スズ、俺のテンション上げて。」

「……デートのために、早く帰って来てください。」

「(! ヤバ…いよいよ手出しそう。)うん。終わったらソッコーで帰ってくる!」

「押忍!」


問題児のテンションを上げるため、恥ずかしがりながらも期待に応えようとするスズ。

そんな彼女にまた心を奪われ、それでも何とか気持ちを抑えながら五条は満面の笑みを見せる。

そして最後に一度ポンとスズの頭を撫でてから、手のかかる師匠はようやく高専を出発したのだった。



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