スズの元気が復活し、彼女が再び虎杖の様子を見やったとき…
聞こえてきたのは、夜蛾学長の"不合格だ"という言葉だった。
そしてそれと同時に、学長の横にいた呪いのこもったぬいぐるみ…通称・呪骸がのそのそと動き出す。
一通りの問答で納得のいく回答が得られなかったため、呪骸と戦う中でそれを導き出そうとしているのだ。
「…呪術師は常に死と隣り合わせ。自分の死だけではない。呪いに殺された人を横目に、呪いの肉を裂かねばならんこともある。
不快な仕事だ。ある程度のイカレ具合とモチベーションは不可欠だ。それを他人に言われたから?笑わせるな。
まだ死刑を先延ばすためと言われた方が納得がいく。」
「! ざけんな、俺は…」
「君は…自分が呪いに殺された時も、そうやって祖父のせいにするのか。」
「……アンタ、嫌なこと言うなぁ〜」
「気づきを与えるのが教育だ。」
「俺は別に…」
「死に際の心の在り様を想像するのは難しい。だがこれだけは断言できる。呪術師に悔いのない死などない。
そこにいる君と同い年のスズも、それを覚悟して日々任務に出向いているんだ。
今のままだと、大好きな祖父を呪うことになるかもしれんぞ。今一度問う…君は何しに呪術高専に来た。」
夜蛾がスズの名前を出した瞬間、虎杖は反射的に彼女の方を振り返った。
昨日斎場で見た、あの辛そうな表情が思い出される…
向かってきた呪骸を取り押さえながら、虎杖は言葉を発する。
「"宿儺を喰う"…それは俺にしかできないんだって。死刑から逃げられたとして、この使命からも逃げたらさ…
飯食って風呂入って漫画読んで、ふと気持ちが途切れた時、"あぁ今、宿儺のせいで人が死んでるかもな"って凹んで、
"俺には関係ねぇ"、"俺のせいじゃねぇ"って自分に言い聞かせるのか?そんなのゴメンだね。
自分が死ぬ時のことは分からんけど、生き様で後悔はしたくない…!」
「…スズと少し似てるね。」
「! はい。だからあの日…彼を死なせたくなかったのかもしれません。」
虎杖の力強い言葉を端で聞いていた五条は、スズの方に少し頭を寄せ小声でそう囁いた。
数年前、彼女が夜蛾の前で話した決意とどこか似た匂いを感じたから…
スズもまた、虎杖に自分と似た何かを感じ笑みを零した。
「悟、寮を案内してやれ。それから諸々の警備の説明もな。」
「ん?」
「合格だ。ようこそ呪術高専へ。」
「! よろっ…」
「あっスマン。術式解くの忘れてた。」
無事に合格して油断したところを、呪骸に一発殴られて倒れる虎杖。
だが駆け寄ったスズが声をかければ、"これからよろしくな!"と何ともいい笑顔を見せるのだった。
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