五条が運転する車の助手席に乗り、スズは後ろに座る真希や乙骨と共に実習現場へとやって来た。

このペアが実習を行うのは、児童2人が失踪した小学校だ。

負の感情の受け皿になりやすい学校では呪いが発生しやすい。

今回の案件も、その呪いによって児童が連れ去られたと考えられている。


「呪いを祓い、子供を救出。死んでたら回収だ。息があれば、ここにいるスズがどうにかできるから。」

「押忍!憂太先輩と真希先輩も、ケガには十分気をつけてくださいね。」

「う、うん…!」「あぁ。」

「じゃあ始めようか。…"闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え"」

「! 夜になってく…!!」

「"帳"…君達を外から見えなくし、呪いを炙り出す結界だ。内側から簡単に解けるよ。そんじゃくれぐれも…死なないように。」

「死って…!先生!?」


急に降って来た"死"という単語に、乙骨は焦りの表情を見せる。

だがそんな彼にはお構いなく、五条はスズを伴ってさっさと"帳"の外へと出て行ったのだった。


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「…先生、もう少しアドバイスとかしなくていいんですか?」

「いいのいいの。口で言うより、体で覚えた方が早いからね。」


"帳"が降りていくのを見つめながら不安そうに問いかけるスズに、五条はいつもの飄々とした感じで返事をする。

真希はまだしも、乙骨は今日高専に来たばかり…スズが心配になるのも当然だ。

校門の前でウロウロして落ち着かない弟子の姿を、五条は車に寄りかかりながら面白そうに眺めているのだった。

と、不意にその弟子が何かを思い出したようにこちらを振り返る。


「あ、そういえば先生!」

「ん〜?」

「憂太先輩って、もう学生証できたんですか?」

「できたよ。ここに来る前に渡してあるけど…何で急にそんなこと聞くの?」

「憂太先輩の階級が何なのかな〜と思って!」

「あぁ、そういうことか。…何級だか当ててみ?」

「ん〜そうだなぁ…術師の家系じゃないし、何か実績があるわけでもないから4級かなと思うけど…

 でも里香ちゃんがいることを踏まえて総合的に考えると……2級だ!!」

「ハズレ〜次の任務の時パフェ奢りな。」

「えっ、そんな条件がついてるの聞いてないです!!」

「うん、だって今決めたもん。楽しみだな〜」

「やだー!!……で、結局何級なんですか?」

「憂太は特級だよ。」

「特級!?じゃあ4人目、ってことですか。」

「そういうこと〜だから早く成長してもらわないとね。」


のんびりとそんな会話をすること20分…

"帳"の中が突然騒がしくなり、スズと五条は途轍もない量の呪力が発出されたのを感じ取った。

未だかつて感じたことのない呪力量に、スズは呆然としながら師匠に声をかける。


「悟先生、今の…!」

「うん、凄まじいね。これが特級過呪怨霊・祈本里香の全容か…」

「すごいです…憂太先輩が特級の理由が分かりました。」

「でしょ。ククク…女は怖いねぇ。」

「…それ、私の前で言います?」

「スズも怖い女になるかもよ?」

「なりませんよ!…たぶん。」

「(俺が惚れるぐらいの女になるかな…?)」

「…ん?何ですか?」

「ふっ、何でもねーよ。もうすぐ戻って来ると思うから準備よろしく。」

「らじゃ!」


この約1年後…

隣にいる少女が自分にとってかけがえのない人物になることを、この時の五条はまだ知らずにいるのだった。



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