「やぁやぁ皆、調子はどうだい?」


スズと共に大きな塔のような場所から外界へ出てきた五条は、開口一番そう言って笑顔を見せた。

彼が視線を向ける先には、手合わせをしていた真希と乙骨、そしてそれを見学している狗巻とパンダの姿がある。

小学校での任務以降、乙骨は五条から刀を渡され、呪いの解呪と刃物の扱いに勤しんでいた。

1年生の中で同じように武具を使うのは真希だけであり、彼女を師として2人は日々手合わせを行っている。

そんな様子を、狗巻の隣に座りながらスズは尊敬の眼差しで見つめていた。


「憂太が高専に来て3ゕ月か…かなり動けるようになったな。」

「しゃけ。」

「この短期間ですごいですよね!」

「そうだね〜性格も前向きになったし。」

「すじこ。」

「確かに真希も楽しそうだ。今まで武具同士の立ち合いってあんまなかっ…!!憂太ァ!!ちょっと来い!!カマン!!」

「おかか。」

「棘先輩?急に何ですか?耳聞こえないんですけど…!」


パンダに突然降りてきた天啓に不穏なものを感じた狗巻は、すぐに隣にいるスズの耳を両手で塞ぐ。

不意の行動に対応できず"?"マークが浮かびまくってるスズを他所に、パンダは高校生男子特有の話題を乙骨に振った。


「オマエ巨乳派?微乳派?」

「(今!?)あんまり気にしたことないんだけど…」

「ふんふん。大丈夫、スズには聞こえてないから。」

「えっと…人並みに大きいのは好きかと…」

「ほっほーう。…真希!!」

「あ?」


そう言いながらこちらを向いた真希に、パンダは手で大きな丸を作って笑みを見せた。

その意味を察し、烈火の如く怒り狂った真希がパンダと取っ組み合っている中…

五条は担任らしく、残りの生徒達へ声をかけた。


「はーい、集合。そこの2人は引き続き鍛錬してもらって…棘、ご指名。君に適任の呪いだ。ちゃちゃっと祓っておいで。」

「しゃけ。」

「またご指名なんて、棘先輩モテモテだ!」

「ご指名…」

「棘は1年で唯一の二級術師。単独での活動も許されてんの。」

「へぇ〜凄いなぁ。」

「(オマエ特級じゃん…)」

「憂太も一緒に行っといで。棘のサポートだ。」

「サポート…」

「ってよりは見学だね。呪術は多種多様…術師の数だけ祓い方があると思ってくれていい。

 棘の"呪言"はそのいい例だ。しっかり勉強しておいで。呪いを解くなら、まずは呪いを知らなきゃね。」

「憂太先輩、ファイトです!!」

「う、うん。ありがと…!」


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1時間後…

支度を整えた狗巻と乙骨は、高専の出入口に止めてある移動車の前で待機をしていた。

まだ実戦経験が少なく不安そうな乙骨と五条が話している間に、スズはガチャガチャと音がする袋を持って狗巻の元へ。

呪言の影響がないようにその場から少し離れ、2人は小声で会話をする。


「棘先輩…!」

「ん?」

「これ、持ってってください!今回の任務では必要ないと思いますが、念のために。」

「! 喉の薬。ありがと、助かる。」

「本当はついて行きたいんですけど、今日は私も任務があるみたいで…」

「大丈夫だよ、すぐ帰ってくるから。スズの方こそ、任務気をつけてね。」

「はい!ありがとうございます!」

「-----もしまた全部出しちゃったら、僕と憂太処分ころされちゃうから!!」

「なっ!」

「てことで、よろしくね〜。スズ、行くよ。」

「あ、はい!」


五条とスズに見送られ、狗巻と乙骨は車に乗り込む。

向かうは、シャッター街と化したハピナ商店街だ。



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