12月24日 百鬼夜行 当日
首謀者である夏油は、何故か呪術高専に姿を現した。
辺りにいる関係者達を次々に殺しながら、彼は1人言葉を漏らす。
「百鬼夜行の真の目的は、乙骨を孤立無援に追い込むこと。さぁ…新時代の幕開けだ。」
それから数分後…
高専の敷地一体に、濃く暗い"帳"が下りた。
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一方その頃、もう1人のお目当てであるスズはと言うと…
彼女は五条と共に、闇に包まれた新宿の街へ出動していた。
本来であれば、高専に入学していないスズがこのような現場に出ることはあり得ない。
だがこの未曾有の事態でどれだけの負傷者が出るか分からないため、彼女の治癒能力が必要不可欠だと判断されたのだ。
このことに、五条は最後まで反対した。
"できることなら行かせたくない"と。
「…って、言ったんだけどさ〜どうしてもって学長が聞かなくて。」
「大丈夫です!私、頑張ります!」
「ん。気合い入ってんのはいいんだけど、スズは基本治療班だから。前線には絶対出てくんなよ。」
「らじゃ!!」
「…本当に分かってるか?」
「分かってますよ!」
「…じゃあ俺がケガしたらよろしくな。」
「もちろんです!!」
「分かってねーじゃねぇか。前線に出てる俺の治療しに来るってことは、オマエも同じ場所にいるってことだからな?」
「えっ!今のはズルいですよ!」
「ズルいとかそういう問題じゃねーの。」
スズの頬をつねりながらそう言った五条は、痛がっている彼女を不意に抱き寄せる。
師匠の突然の行動にキョトンとしているスズの耳元で、彼はゆっくりと話しかけた。
「今回の親玉は傑だ。何してくるか、俺でもまだ分かんない。」
「悟先生…」
「今成長しまくってるスズに手出されたくねーんだよ。だから俺がいいって言うまで絶対出てこないこと。いいな?」
「はい、分かりました。」
スズの両肩に手を置き、真剣な顔で目線を合わせながらそう言う五条に、彼女もまたしっかりと返事をする。
今までと違う真面目なトーンに安心し、五条はやっと少し笑みを見せた。
そうしてスズに一旦別れを告げ、外へと出て行く五条。
ビルの上にいる夏油の仲間達を見上げながら、当の本人がいないことに疑問を感じていた。
そこへ慌てた様子で伊地知が駆け寄って来る。
「五条さん!!報告が…どうされました?」
「いや、なんでもない。どうした?」
「こんな時にとは思いますが、早い方がいいかと。以前調査を依頼された乙骨の件です。」
そう言って話し始めた伊地知からの報告を聞き、五条の表情が一変する。
即座にこの後の行動を決めると、自分の教え子達に声をかけた。
「パンダ!!棘!!」
「どうし「質問禁止!!今から2人を呪術高専に送る!」
「はぁ!??」
「1分ここで待ってろ。」
耳に入って来た言葉の意味が分からない2人は、戸惑いながら五条に引きずられていく。
少し開けた場所まで来ると、五条は彼らに待機を命じた。
そして一瞬頭を抱えたかと思うと、次の瞬間には大事な弟子の名前を呼んでいた。
「(…本音を言えば絶対行かせたくない。でもアイツの力がないと、被害がもっと大きくなる…)スズ!!」
「! はい!」
「…ちょっと来て。」
「押忍!」
建物内からひょこっと顔を出したスズは、師匠からの許可で外へ飛び出してくる。
自分の方へ走って来る彼女の肩を抱いて顔を近づけると、五条は口早に伊地知からの報告を伝える。
驚きながらも一切口を挟まず、話の理解に努める辺りは、破天荒な五条との長い付き合いの賜物だろう。
「…ってわけ。」
「なるほど…だから憂太先輩と真希先輩が危ないんですね。」
「うん。今からパンダと棘を高専に送る。スズにはその2人を含めた、4人の治療を頼みたい。」
「分かりました。」
「…オマエは治療に専念すること。絶対戦おうと思うな。俺もこっち片づけてすぐ行くから。」
「はい!」
「頼むな。」
力強く返事をするスズの頭に軽く手をやると、五条は彼女を連れてパンダと棘がいる場所へ向かう。
そして3人を自分の術式で囲みながら、指示を出した。
「おい、悟!どういうことだ!スズも行くのか!?」
「夏油は今、高専にいる!絶対…多分、間違いない!」
「どっちだよ!!」
「勘が当たれば、最悪憂太と真希…2人死ぬ!!」
「「!」」
「僕もあの異人を片づけたらすぐ行く。2人を守れ。悪いが死守だ!!」
「応!!」「しゃけ!!」
「スズ、さっき言った通りだ。頼むぞ。」
「はい!!」
五条が手を合わせ術式を発動すると、3人の姿はバシュッとその場から消え去ったのだった。
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