呪術高専へと飛ばされた3人は、空中から高専の周辺一帯に"帳"が下りているのを確認した。
スズと狗巻を背中に乗せるパンダも含め、3人は落下しながら言葉を交わす。
「"帳"が下りてる!!悟の勘が当たったのか!??」
「そうですね!中から夏油さんの呪力も感じます!」
「俺が"帳"を破る!!あとは最短でいくぞ!!スズは現場に着いたら、憂太と真希の安否確認な!!」
「明太子!!」「分かりました!!」
一方その頃…
中にいる夏油はいち早く"帳"の異変に気づくが、その表情に変化は見られない。
「! おっと。誰かが"帳"に穴を開けたな。何事もそう思い通りにはいかないもんだね。
…ん?へぇ〜彼女も来たか。まぁ当然と言えば当然だが、あの悟がよく決断したな。術式を見るのが楽しみだ。
侵入地点からここまで5分ってとこか。無視するべきか、片づけておくべきか…迷うね。」
そう呟いた次の瞬間、夏油の横にあった壁がものすごい音と共に破壊された。
そこから飛び出して来たのは、戦闘モードのパンダだった。
全ての壁をぶち破った最短コースで来たため、夏油の予想を遥かに上回るスピードで到着したのだ。
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現場に到着すると、スズは先輩2人と別れすぐさま真希の元へ向かった。
思っていた以上に酷いケガを負っている彼女の姿に、スズは思わず息を呑む。
1つ深く呼吸をして頭を切り替えると、真希の周りに領域を展開して治療を始めた。
それから20分も経っただろうか…
轟音と共に、大きな衝撃がスズのいる場所まで伝わって来た。
呪力を探れば、パンダと棘は少し弱ってはいるものの無事な様子だった。
だが安心したのも束の間、その後すぐにより大きな音と衝撃がスズの元に届いた。
「スズ、逃げろ…!!」
「!」
微かに聞こえたパンダの声に反し、スズはコッソリと声の方へ向かう。
チラッと覗いた先には、口から血を吐きボロボロになっているパンダと狗巻の姿があった。
その上で更に攻撃をしようとしている夏油の前に、スズは五条の言いつけを破って躍り出た。
「もうやめてください…!」
「スズか。また会えて嬉しいよ。君の力はやはり素晴らしい!!呪力の感じで分かる…あの落ちこぼれがかなり回復しているね。」
「真希先輩をそういう風に言わないで!!」
「おまけに今は2人の先輩を守ろうとしている…まだ非力なその体で。」
「非力じゃない!!」
「ふっ。悟に言われたんじゃないかな?治療に専念することって。」
「…」
「せっかく先輩が"逃げろ"って言ってくれたのに、こっちに出てきちゃダメじゃないか。」
「……夏油さんは、もう悟先生のこと友達だと思ってないんですか?」
「!」
「悟先生は、学生時代の写真を今でも大事に持ってます。まだ、夏油さんのことを…大切に思ってると思います。
だからもうこれ以上、先生の教え子を傷つけないでください。お願いします…!!」
力で敵わないのは、夏油に言われるまでもなくスズ自身も分かっていた。
だから攻撃をする代わりに、頭を下げて必死に想いを伝えるのだ。
そんな彼女に、夏油は少し笑みを向けながら穏やかに話しかける。
「頭を上げて、スズ。君は優しいね…後ろの2人を治療しながら、悟のことまで気にかけてる。」
「(! 治療してるのバレてる…!)」
「…君はやはり彼女に似ている。悟が心を開くのも納得できるよ。本当はこのまま連れ帰りたいんだが…すまないね。」
「? …はっ!!」
夏油の優しい話し方に油断し、ガードが遅れたスズ。
結果的に彼の攻撃をモロに喰らい吹っ飛んだが、先輩3人の領域展開だけは切らさないようスズは最後の最後まで踏ん張っていた。
ここまでの一連の流れを受け、夏油の目には大量の涙が浮かんでいた。
「素晴らしい!!素晴らしいよ!!私は今!!猛烈に感動している!!
乙骨を助けに馳せ参じたのだろう!!?自分が死ぬ寸前まで治療をしていたのだろう!!?
呪術師が呪術師を、自己を犠牲にしてまで慈しみ!!敬う!!私の望む世界が、今目の前にある!!!」
「真希さん?」
「本当はね…君にも生きていてほしいんだ、乙骨。でも全ては呪術界の未来のためだ。」
「パンダ君…スズちゃん…」
「ゆ"ぅだ……」
「! 狗巻君!!」
「逃…げろ。」
「来い!!!里香!!!!」
記録---2017年12月24日
特級過呪怨霊 祈本里香
二度目の完全顕現
「君を殺す。」
「ブッ殺してやる。」
to be continued...
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