夏油が仕組んだ事件から1週間が経ったある日のこと。
世間に漂う年末の慌ただしい雰囲気が嘘のように、高専には穏やかな空気が流れていた。
寒さがより一層厳しくなる中、今日も今日とて1年生達は呪術実習に向かう。
前を歩く真希・狗巻・パンダに続いて、乙骨は高専の名物兄妹に挟まれて歩いていた。
第5話 入学準備
「今更だが夏油の件、君に非はない。憂太がいなくても、アイツは必ず高専にきた。」
「ですかね…」
「ですよ、憂太先輩。」
「それからコレ!」
「あっ、学生証。先生が拾ってくれてたんだ。」
「いや、僕じゃない。僕の親友だよ…たった1人のね。」
そう言って少し笑みを見せた師匠に、スズもまた頬を緩めた。
少し前で待っている真希から声をかけられ、そちらに走って行く乙骨。
すっかり頼もしくなった彼の左手の薬指には、里香との約束の証が光っていた。
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「さっ、俺らも行こっか。」
「どこにですか?」
「…俺、今日のこと言ってない?」
「はい、たぶん。」
「……てへっ!でも慣れたでしょ?俺のこういう感じ。」
「慣れましたけど、そういう問題じゃないですから!…で、今日何があるんですか?」
「スズの入学手続き。」
「入学……えっ!本当ですか!?」
「うん。春には1年生だからね〜今からいろいろ準備しとこうな?」
嬉しそうなスズの頭にポンと手を置いた五条は、そう言って笑顔を見せた。
高専の方へ戻るため歩き出した2人だったが、意気揚々と前を歩いていたスズが突然振り返る。
その顔は、さっきまでの高専入学に喜ぶ表情とはまた少し違う笑みだった。
「先生!」
「ん〜?って、何ニヤニヤしてんの?」
「ふふふっ。」
「…何だよ。」
「悟先生と夏油さんは相思相愛ですね!」
「へ?何、急に。」
「先生達はやっぱり名コンビだってことです!」
「! ふっ…そりゃどーも。ほら、早く行くぞ。」
「はい!」
心なしか嬉しそうな師匠の顔を見て、スズはさらに満開の笑顔になるのだった。
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