「1年がたった4人って少な過ぎねぇ?」

「じゃあオマエ、今まで呪いが見えるなんて奴会ったことあるか?」

「……ねぇな。」

「それだけ少数派マイノリティなんだよ、呪術師は。」

「へぇ〜じゃあ陰陽師も少ねぇの?」

「少ない。呪術師の半分以下ぐらいじゃないかな…?」

「高専にいる陰陽師はスズだけだ。」

「マジか!…っていうか俺が4人目って言ってなかった?」

「入学は随分前に決まってたらしいぞ。こういう学校だしな、何かしら事情があんだろ。」

「あ、先生来た!」


スズ・虎杖・伏黒は今、たくさんの人で賑わう原宿の駅前にいる。

昨日五条から話があった新入生の件…その人物を迎えに来たためだ。

道路脇の鉄柵に寄りかかりながら3人が会話をしていると、早速何かを購入したのか、袋を手に持った呑気な担任が姿を現した。





第4話 鉄骨娘





「おまたせー。おっ、制服間に合ったんだね。」

「おうっ、ピッタシ。でもスズとか伏黒のと微妙に違ぇんだな。パーカーついてるし。」

「制服は希望があれば色々いじって貰えるからね。」

「え、俺そんな希望出してねぇけど。」

「そりゃ僕が勝手にカスタム頼んだもん。」

「…ま、いいか。気に入ってるし。」

「気をつけろ。五条先生こういうところあるぞ。」

「相変わらずだな〜先生は。」


スズは虎杖と似たパーカー付きの上着と、ショートパンツにタイツ姿。

伏黒は首元が隠れるタイプの上着に、虎杖と似たパンツ姿。

自分の制服が2人のものと違うことを指摘すれば、いつの間にやらカスタマイズされていたとのことで…

そんな自由な担任に連れられて、3人は特に人混みが激しい竹下通りの方へ向かった。


「それよりなんで原宿集合なんですか?」

「本人がここがいいって。」

「アレ食いたい!!ポップコーン!!」

「原宿がいいって…新しく来る子って、もしかして女の子ですか?」

「おっ。珍しく勘がいいじゃん。どうしたの、頭でも打った?」

「打ってません!失礼な!…女の子かぁ!どんな子だろ…!」


からかってくる五条に対抗しながらも、同級生として初の女の子が来ることに喜びを隠せないスズ。

どうしたって男性が多い業界。同級生に女子が来ることはとても珍しいのだ。

先ほどより足取りが軽くなったスズを見て、五条もまた表情を緩めた。


そうして歩くこと数分。

今4人の目には、スカウトマンを逆スカウトしているぶっ飛んだ女子が見えている。


「俺達今からアレに話しかけんの?ちょっと恥ずかしいなぁ。」

「オメェもだよ。」

「わお。悠仁、いつの間にそんないろいろ買ったの。」

「おーい、コッチコッチ。」


呼ばれてこちらに歩いてきた女子は、茶色のボブが似合う、強気な目元が印象的な子だった。

少し静かな場所へ移動してから、五条が担任の先生らしく場を取り仕切る。


「そんじゃ改めて…」

「釘崎野薔薇。喜べ男子、女子が2人なんて滅多にないわよ。」

「(ウザ…)」

「恵、顔怖い。癖が強くていいじゃん!」

「俺、虎杖悠仁。仙台から。」

「伏黒恵。」

「木下スズです!女子同士よろしく!」

「(虎杖…見るからにイモ臭い。絶対ガキの頃、ハナクソ食ってたタイプね。

 伏黒…名前だけって…私偉そうな男って無理。きっと重油まみれのカモメに火をつけたりするんだわ。

 スズ…私の唯一の救い。苦手なぶりっ子タイプじゃなくて良かった〜仲良くなれそっ。)」

「野薔薇…?大丈夫?」

「私ってつくづく環境に恵まれないのね。はーあ。スズがいて良かったわよ。」

「人の顔見てため息ついてる。」

「どんまい、悠仁。」


こうして癖強めの女子・釘崎との初対面も済み、4人は晴れてチーム1年としてのスタートを切った。

今日のミッションとしてはこれで完了のはずだが、1年担任は帰る気配を見せない。

疑問に思った伏黒が声をかけると…?


「これからどっか行くんですか?」

「フッフッフ。せっかく1年が4人揃ったんだ。しかもその内2人はおのぼりさんときてる…行くでしょ、東京観光。」

「え"。」「おぉ!」

「TDL!TDL行きたい!!」

「バッカ!TDLは千葉だろ!中華街にしよ、先生!!」

「中華街だって横浜だろ!!」

「横浜は東京だろ!!」

「え、横浜は神奈川…」

「スズ無視だ。スルーしとけ。」

「静まれ。それでは行き先を発表します。」

「「…」」

「六本木。」


五条が決め顔でそう告げると、虎杖・釘崎のおのぼりペアは目をキラキラさせる。

六本木といえば、ヒルズをはじめとする数々の観光スポットがひしめく東京の一等地だ。2人の反応も頷ける。

一方で東京歴が長く、五条との付き合いも長いスズと伏黒は、何かあるのでは…と疑いながら、六本木方面へと向かうのだった。



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