チーム1年の一行が到着したのは、高層ビルが立ち並ぶキラキラした街ではなく…
誰がどう見てもヤバそうな雰囲気を持ったビルの前だった。
「いますね、呪い。」
「本当だ……3体、かな。」
「うん、今日も探索能力は調子いいね。」
「嘘つきー!!六本木ですらねー!!」
「地方民を弄びやがって!!」
思ってた場所と真逆のところへ連れてこられ、おのぼりペアは大騒ぎ。
特に野薔薇はそれが顕著で、しばらく怒りが収まらなかった。
そんな中、一足早く気持ちを切り替えた虎杖に対して、五条達がいろいろと情報を伝え始める。
「でかい霊園があってさ、廃ビルとのダブルパンチで呪いが発生したってわけ。」
「やっぱ墓とかって出やすいの?」
「墓地そのものじゃなくて、墓地=怖いって思う人間の心の問題なんだよ。」
「あー学校とかも似た理由だったな。」
「ちょっと待って。コイツそんなこと知らないの?」
「実は…」
「飲み込んだぁ!?特級呪物をぉ!?きっしょ!ありえない!!衛生観念キモすぎ!!」
「の、野薔薇…気持ちは分かるけど落ち着いて…!」
「んだと?」
「これは同感。」
またしても一通り騒ぎ倒した後、一行はいよいよ本題に入っていく。
今回この場所を訪れた目的は、虎杖・釘崎の実力チェック…いわゆる実地試験というわけ。
ここで問題になるのは、呪術を使えない虎杖だ。
彼は呪物を飲み込んでいるため、半分呪いみたいなものだが、今すぐ呪力をどうこうするのは無理な話。
そこで…
「これを使いな。」
「おお。」
「呪具"屠坐魔"…呪力の篭もった武器さ。これなら呪いにも効く。
あーそれから、宿儺は出しちゃ駄目だよ。アレを使えばその辺の呪いなんて瞬殺だけど、近くの人間も巻き込まれる。」
「? はやくしろよ。」
「あっ!2人ともちょっと待って!!」
早速ビル内に入って行こうとする虎杖と釘崎を、突然スズが呼び止める。
揃ってこちらを振り返る2人に、彼女は長い紐につけた白い勾玉を渡した。
不思議そうな顔で受け取ったのを確認し、スズはゆっくり話し始める。
「私は陰陽師だから、人の呪いとか痛みを取る力があるの。その力をこの勾玉に込めた。
だから軽いケガや痛みだったらこれをかざせば治るし、1回だけならこれを投げつければ身代わりになる。
もちろん使わないに越したことはないから、まぁお守りみたいな感じで持っててもらえれば…!」
「すげっ!ありがとな、スズ!大事にする!」
「ありがと!なんかスズが傍にいるみたいで安心するわ!」
「ちなみに…僕と恵も貰ってるんだよ。」
そう言って、服の中から首に下げた勾玉を引っ張り出す五条と伏黒。
スズは出会った人達には、可能な限りこの勾玉を渡している。
その効果のせいか、渡した人物の人柄のせいか、この勾玉はほんのりと温かくて…!
常に死と隣り合わせの呪術師達にとって、これがお守り以上の力を発揮しているのは間違いない。
そんな勾玉を首から下げ、虎杖と釘崎は今度こそビル内へと足を踏み入れるのだった。
- 41 -
*前次#
ページ:
第0章 目次へ
第1章 目次へ
第2章 目次へ
第3章 目次へ
第4章 目次へ
第5章 目次へ
第6章 目次へ
章選択画面へ
home