ちょっとしたトラブルはあったが、それでも何とか訓練を終えたスズ。
その後は式神を使うにあたってのコツを伏黒から教えてもらいながら、体力と呪力の回復に努めた。
そんな2人の元へ、早めに任務を終えた担任が戻って来る。
「ただいま〜」
「あ、悟先生!おかえりなさい!」「お疲れ様です。」
「お疲れ〜特訓どうだった?」
「バッチリです!恵のお陰で、いろいろコツを掴めました。」
「それは良かった!さすがだね、恵。」
「いえ。俺にとっても、自分の術式を見直すいい機会でした。」
「ん〜いいね〜!じゃあ頑張った2人にご褒美ってことで…」
「「?」」
「夕飯食べに行こう!僕の奢りだから、高いのでいいよ〜」
「やった!恵、何にする?」
「腹減ったし、肉がいい。」
「いいね!私もお肉食べたい!」
「じゃあ叙々苑にしよっか。」
五条の案に、スズも伏黒も大賛成。
3人は揃って、高級焼き肉店へと向かったのだった。
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叙々苑パーティーから数週間が経ったある日の夜。
任務がなかったスズは、部屋で1人のんびりと夜の時間を過ごしていた。
と、不意に外から聞こえたバチバチという激しい音に気づき窓を見れば、いつの間にかものすごい勢いで雨が降っていた。
"そんな予報出てたかな?"と考えるのと同時に浮かんできたのは、今日同期が任務に行っているということだった。
呪力を探れば、ちょうど伏黒が寮に帰って来たところで…
部屋のドアを開けて声をかけようとしたスズは、彼の姿を見て目を見開く。
「おかえり〜雨、大丈夫だった…って、恵!?」
「ただいま。…ん?どうした?」
「どうしたじゃないよ!びしょ濡れじゃん!ちょ、ちょっと待ってて、タオル持ってくる!」
「んな焦んなくても平気だ…って、聞いてねーか。」
しっかり雨に濡れている伏黒を心配し、慌てて自分の部屋に戻るスズ。
彼の声は当然届いてはいない。
そして戻って来たスズは、フワフワのタオルを伏黒の頭にかぶせ、ワシャワシャと拭き始めた。
されるがままになっている彼の表情はとても穏やかだったが、それに反して体はかなりキツかったようで…
ふっと力が抜け、スズに寄りかかってしまう。
「おっと…!恵?」
「…寒ぃ。」
「(こりゃだいぶ熱あるな…)すぐ服着替えよ!ベッドの準備しとくから、お風呂場で着替えて来て?」
「分かった…悪いな。」
伏黒に肩を貸しながら彼の部屋へ向かったスズは、すぐさま部屋を温めてベッドを整える。
そしてパジャマ代わりのジャージに着替えた伏黒をベッドに寝かせると、自分の部屋から持って来たゼリーと薬を手渡した。
「ご飯食べるのしんどいと思うから、とりあえずこのゼリー食べて?」
「うん…」
「で、それ食べたら薬飲んで寝ること。いい?」
「了解……スズ。」
「ん?」
「…ありがとな。」
「! ど、どういたしまして…!」
熱で弱っているせいか、やけに色っぽく見える同期の姿にドキドキしながらスズは言葉を返す。
それから薬を飲んで眠りにつこうとしていた伏黒は、傍でコップや薬の片づけをしていたスズの服をクイッと引っ張った。
「ん?どうした?」
「もう…部屋帰る、か?」
「え?」
「…少しだけでいいから……ここにいて欲しい。」
「あ、う、うん!…大丈夫。今日はずっと傍にいるから、安心して寝ていいよ?」
優しい笑顔と声でそう言われると、伏黒は言われた通りの安心した表情で頷き、スーッと眠りに落ちて行った。
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