八十八橋に到着してから早数時間…

ムスッとした表情の釘崎と伏黒、大あくびの虎杖に、目が半分閉じかけているスズ。

道路沿いのガードレールに並んで座っている4人の顔には、それぞれ疲れの色が見えていた。

それもそのはず…

さっきから待てど暮らせど呪霊の1体も出てこないのだから。


「…小腹空いたし、ちょっとコンビニ行かない?」

「いいね〜俺も腹減った。行こ行こ!」

「私も賛成〜」

「じゃあ新田さんに連絡するぞ。」


スズの提案により、4人は一旦この場を離れコンビニへ向かうことにした。





第49話 起首雷同 ー弐ー





コンビニに到着した一行は、それぞれ好きなものを買ってから駐車スペースで作戦会議を始めた。

問題なのは、あのスズをもってしても呪力の残穢を感じ取れないことだった。


「残穢も気配も、まるで感じられませんでした。」

「木下さんも全然っスか…?」

「はい、全く。本当にあそこが原因なのかなって疑っちゃうぐらい。」

「っスか…となるとハズレ。ふりだしっスかね。」

「でも時間かけるのはマズくねぇ?」

「なんでよ。」

「だって有名な心霊スポットなんだろ?呪われてる人はまだまだいるかも。しかも今ん所致死率100%…これ以上人死には勘弁だろ。」


虎杖の発言に、スズと釘崎は互いに頷き合いながら"確かに…"と同意の意を示す。

何かトリガーになるイベントがあるのでは…と意見を出し合っていた面々の前に、再び伏黒の後輩が姿を見せた。

彼が乗る自転車の後ろには、さっきはいなかった1人の女子が乗っていた。


「……藤沼?」

「「「?」」」

「同級生。」

「姉ちゃんです。」

「よかった…覚えてくれてて。」

「姉ちゃんに伏黒さんの話したんですけど…」

「あの…森下さんって近所でお葬式やってて…その人と八十八橋のこと調べてるってこの子に聞いたから…何か関係あるのかなって…」


そうして彼女が話し始めたのは、自分もまた八十八橋に行っているという内容だった。

聞けば、既に亡くなっている4人と同じような現象も1週間ほど前から発生しているとのこと。

その事実に、スズ達4人は一気にピリッとした空気になる。

自分も死ぬのではと不安になる藤沼という同級生に、新田が咄嗟に嘘をつき何とか安心させた。


「---でも色んな人の話聞きたいから、一緒に行った人教えてほしいっス。」

「(ほっ…)肝試しに行ったのは部活の先輩2人…そうだ伏黒君。」

「?」

「あの時、津美紀さんも一緒にいたよ。」

「(津美紀って…)」「(伏黒のお姉さん…!!)」「(嘘…津美紀さんも!?)」

「そうか。じゃあ津美紀にも聞いてみるわ。」


動揺する3人とは裏腹に、伏黒は表情を変えず淡々とそう言った。

だがスズは見逃さなかった。

藤沼から"津美紀"の名前が出た瞬間の、伏黒の焦ったような表情を…



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