藤沼姉弟と別れ、その姿が見えなくなってから、虎杖は伏黒に声をかける。
彼の表情は、さっきまでの冷静な様子とはまるで別人のように冷や汗をかいていた。
「伏黒。」
「…」
「伏黒!!しっかりしろ!!まずは安否確認だろ!!」
「…大丈夫だ。悪ィ、少し外す。」
「……私ちょっと付き添ってくる!」
「じゃあ俺も「やめときなさい。」
「釘崎…」
「お姉さんのことを知ってるスズに任せた方がいいわ。」
そう言った釘崎と一緒に、虎杖は2人を見送ったのだった。
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伏黒を追ってコンビニの裏手へと走ったスズ。
そこにはコンビニの壁を背にして座り込んでいる同期の姿があった。
「恵…!」
「! スズ…」
「病院に連絡は…?」
「した。今のところは何ともない。」
「そっか…良かった。」
「スズ、悪ィんだけど…」
「あ、1人の方がいい…?」
「いや、違う!…傍にいて欲しい。」
「! もちろん。そのために来たんだから。」
目線を合わせ優しく微笑むスズに、伏黒は安心したような表情でお礼を述べる。
伏黒は彼女の存在に落ち着きを取り戻すと、姉の護衛を頼むため伊地知へと連絡を入れた。
スピーカーにしたスマホを2人で覗き込みながら、今後の動きを3人で決めていく。
『事情は分かりました。津美紀さんの護衛ですね。ですが今、手の空いているのが2級術師の方だけで…』
「「2級…」」
『被呪者の数がこちらの想定よりずっと多いとなると、呪いの等級も見直さねばなりません。
恐らく虎杖君の成長を加味した上で割り振られた任務。そこから更に危険度が上がるとなると、2級術師の手には余るかと。』
伊地知の言葉に、スズと伏黒は頭を悩ませる。
取り急ぎ空いている2級術師に護衛を依頼してから、伏黒は電話を切った。
当初の想定より危険度が増したとなれば、このまま4人で任務に向かうことはそれぞれの命が危険に晒されることになる。
来週には帰って来る五条を待つか…
だがいつ呪いが発動するかも分からない今、時間の猶予はないに等しい。
他の人間を巻き込まず、タイムリミットが近いとなれば、伏黒が導き出す答えは1つだった。
「(他の3人を帰して、俺が1人で祓いに行くしかない…!)」
「ダメです。」
「…何だよ、急に。」
「今、1人で行こうとしてたでしょ。」
「…」
「私じゃ頼りない?」
「! そんなことない。頼りにしてる。でも…もしオマエに何かあったら…」
「私だって、恵に何かあったら嫌だよ。だからお互いを守るために、一緒に行こ?」
顔を覗き込みながら笑顔を見せるスズに、伏黒は素直に首を縦に振った。
状況は何も変わっていないのに、傍に自分と同じ思いの人がいるだけで彼の心はとても穏やかになっていた。
何かを伝えたそうにしていた伏黒だったが、不意に聞こえてきた2人分の足音に言葉を止める。
「悠仁、野薔薇!」
「遅いから来てみたけど…さっきなんで伊地知さんと話してたの?」
「津美紀の姉ちゃん無事だったか?」
「問題ない。それより任務の危険度が吊り上がった。この件は他の術師に引き継がれる。オマエらはもう帰れ。」
「オマエらって伏黒は?え、スズも?」
「俺らは武田さんに挨拶して帰る。ほら行け!!」
「また後でね〜!」
新田が運転する車に無理やり2人を乗せると、スズと伏黒はその車を見送った。
深夜と言われる時間帯まであと数時間。
スズと伏黒は一旦近くの公園で時間を潰すことにするのだった。
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