「やっぱ俺も行きますよ。」
「無理しないの。病み上がりなんだから。」
「でも虎杖は要監視でしょ。」
「まぁね。でも…今回試されてるのは野薔薇の方だよ。」
虎杖と釘崎を見送った後、残った3人は廃ビル前の道路で待機することに。
伏黒は椅子のような四角い台に、五条は道路に直接腰を下ろしている。
そしてスズはといえば、何故か五条の足の間に体育座りをし、腰には彼の腕が回された状態で座っていた。
普通であれば、この中で唯一の女子なのだから椅子に座るのが適当だと思うのだが…
「そういやスズ、椅子座んなくていいのか?隣空いてるけど。」
「ありがと!でも大丈夫!今特訓してるところだから。」
「特訓?」
「そっ。スズは今、呪力変換の特訓中なの。」
そうして、五条はスズの特訓内容について説明を始める。
彼女は他の呪術師や陰陽師と違い、呪力が正のエネルギーを帯びた特異体質なのだ。
正のエネルギーは、一般的には治癒や退魔の力として認識されている。
よって相手の呪いや痛みを取り除く陰陽師としては抜群の力を発揮するため、スズの元には日々たくさんの除霊依頼がやってくる。
さらに弱い呪霊に対しては退魔の力が発動し、触れただけで倒せるというすごい力なのだ。
だが一方で、強い呪霊は正のエネルギーでは倒せない。
それどころか、負のエネルギーで満ちた呪霊は、スズの正のエネルギーに引き寄せられるように近づいてくるのだ。
倒せないのに寄って来る…それがどれだけ危険な状態であるかはお分かりになるだろう。
ではどうするか?五条が考えたのはこうだ。
強い呪霊に対しては、負のエネルギーを使って祓うしかない。
しかしスズの体内には負のエネルギーがない。
そこで…
「スズを負のエネルギーに慣れさせて、体の中心に僕の呪力をベースにした核を作る。」
「核…」
「そう。その上で、出来上がった核に対して、自分が持つ正のエネルギーを負の方に変換して増やしていけば…」
「負のエネルギーが体内に蓄積される。」
「そういうこと〜」
「その正から負への変換を、今練習してるってことか。」
「うん!あと負のエネルギーにも慣れなきゃだから、時々こうやって先生に呪力を入れてもらってるんだ。」
「そっか。頑張ってんだな。」
「まぁね!早く強くなりたいし…!」
「2人のやってることは分かりました。でもだとしたら…先生はそんなにスズにくっつかなくてもよくないですか?」
「え〜いいじゃ〜ん。この体勢楽なんだもん。」
自分を睨んでくる伏黒に対して、五条はさらにスズの肩に顎を乗せながら可愛くそう言ってニヤニヤする。
そんなとても年上と思えない担任に、伏黒は呆れたようにため息を落とす。
そして、この騒ぎに全く動じず目を閉じて真剣に特訓に励む同級生を見て、少し笑顔を見せるのだった。
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