辺りがすっかり闇に包まれる頃…

残った2人はまた八十八橋へとやって来た。

だが今度は夕方の時と違い、橋の下から現場へと入る。

いろいろと考えを巡らせている伏黒の横で、スズは予想していた通りの呪力が傍にいることを感じ取っていた。


「(術式を付与した領域を延々と展開し続けるのは不可能だ。

 となるとこの結界は、少年院の時のような未完成の領域だ。今回は逆に助かった。"帳"の必要がない。)」

「(恵、気づいてないんだろうな〜)」

「自分の話をしなさ過ぎ。」

「だな。」

「!」

「ここまで気付かないとは、マジでテンパってるのね。スズはすぐ気付いたわよ?」

「別に何でも話してくれとは言わねぇけどさ…せめて頼れよ。友達だろ。」

「…津美紀は寝たきりだ。この八十八橋の呪いは被呪者の前にだけ現れる。本人が申告できない以上、いつ呪い殺されるか分からない。

 だから今すぐ祓いたい。でも任務の危険度が上がったのは本「はいはい。もう分かったわよ。」

「はじめっからそう言えよ。」


すっかりやる気満々な虎杖と釘崎の姿に、伏黒は少し口元を緩める。

そんな彼を見て、スズもまた嬉しそうに笑顔を見せるのだった。


「持つべきものは、ってやつだね!」

「…そうだな。でも気づいてたんなら言えよ。」

「だって集中してる感じだったし、邪魔しちゃ悪いかな〜って!」

「わざとだろ。ったく…」


ぶっきらぼうな口調とは裏腹に、伏黒は穏やかな表情でスズの頭にポンと手を置いた。

それから前を行く虎杖と釘崎に続いて歩を進めるスズと伏黒。

橋の上にいる間はどうやっても何も感じ取れなかった呪いの気配…

この現場の呪いにはいくつかの発生要因があるのだ。

夜…橋の下…そして川や境界を跨ぐ、彼岸へ渡るという行為。

この3つが合わさった瞬間…!


「出たな。」

「祓い甲斐がありそうね。」

「ん?何かもう1つ変な気配が…」

「あ"?」

「「「!」」」

「なんだぁ?先客かぁ?」

「伏黒、コイツ別件だよな。」

「…あぁ。」

「スズがさっき言ってた変な気配もコイツ?」

「うん、間違いない。」

「じゃあオマエらはそっち集中しろ。コイツは俺が祓う。」

「なんだぁ?遊んでくれるのかぁ?」


あれだけ感じとれなかった呪いの気配が途端に目の前に広がったかと思えば、直後4人の背後から新たな呪いが姿を見せた。

姿形は異形なものだが、言葉を話している点において等級はかなり上だ。

ここで3対1に別れた1年チームは、各自の戦いへ身を投じるのだった。



to be continued...



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