ほぼ同じタイミングで領域展開を会得し、特級呪霊を倒したスズと伏黒。

それぞれに宿儺の指を握りしめながら、2人は意識を失いその場に倒れ込んだ。

その様子を満足気に見つめる人物がいた。


「いい。それでいい。」


自身の生得領域でそう言った両面宿儺は、お気に入りの2人の活躍に笑みを深くする。

更に彼を喜ばせたのは、他でもない愛しの彼女だった。


「(それにしても、スズの領域展開が俺のに似ているとは…どこまでも俺好みな女だ。)」


宿儺の自分への執着が増していることなど知らず、スズは未だ眠り続けていた。





第52話 起首雷同 ー伍・陸・漆ー





3年前…スズと伏黒が共に中学1年の年。

そして同時にそれは、2人が初めて対面した年でもあった。

記念すべき初顔合わせの場所は、伏黒が通う浦見東中学校。

その校門前にサングラス姿の五条と、彼の隣でキョロキョロと辺りを見回すスズの姿があった。


「制服可愛い…!」

「…スズも着たかった?」

「! んー…少し。でも今の生活楽しいから平気です!」

「ふっ…そっか。おっ!スズ、兄弟子来たよ。」


不意に見せた笑顔に前を通る女性達が見惚れているのも構わず、五条はそう言ってスズの頭をポンと叩く。

そうして彼女が目を向けた先には、まだあどけなさの残る13歳の伏黒がこちらへ歩いてきていた。


「恵〜」

「! …何でいるんですか?」

「今日は君に紹介したい子がいてさ。」

「?」

「じゃ〜ん!兄弟弟子の木下スズちゃんでーす!」

「初めまして、兄弟子!!」

「うるせぇ。」

「ほら、そんなこと言わない。自己紹介して。」

「…伏黒恵。」

「よろしくお願いします、恵君!」


笑顔でガバッと頭を下げるスズに、伏黒は何も言葉を返さずその場を去って行った。

テンションの低い兄弟子に冷たい対応をされ、さぞかしヘコんでいるかと思ったが…

元々のお気楽な性格故か、あまり気にしていない様子。

去って行く伏黒の後ろ姿を見送りながら、横にいる師匠にのんびりと話しかける。


「兄弟子はいつもあんな感じなんですか?」

「ん〜あの子の家はいろいろ複雑だからね〜スズや俺とは少しテンションが違うかも。」

「そうなんだ〜カッコいいんだから、もう少し笑ったらめちゃくちゃモテるだろうに。」

「恵ってカッコいいんだ。」

「カッコいいですよ〜そこにいた女の子達がチラチラ見てましたもん!」

「へ〜全然気づかなかった。」

「先生は自分の顔面が強すぎるからな〜」

「ありがと!まぁとにかく悪い子じゃないから、仲良くしてあげて?」

「もちろん!将来の同期ですし!」


そう言ってまた笑顔を見せるスズに、五条の顔も穏やかになる。

性格は真逆だが、伏黒にとって彼女の存在は大きな助けになると師匠は確信するのだった。


それからというもの、スズは時間を見つけては伏黒に会いに中学校を訪れていた。

最初は校門付近で出待ちをし、正門から出てきたところを突撃する方法を取っていたスズ。

だが伏黒もバカではない。そんなことが続けば、当然正門以外の場所から学校を出るようになった。

となれば、スズはどうするか…?


「! バカ!オマエ何、中入って来てんだよ!」

「だって恵君、全然捕まんないんだもん!お話したいのに!」

「だからって校舎の中に入ってくんな!見つかったら面倒くせェだろ!!」

「…」

「…はぁ〜何をそんなに話したいんだよ、俺と。」

「……特に決めてなかった。」

「ふっ…んだよ、それ。」

「あっ!初めて笑ったとこ見た!!」

「! …笑ってねェ。」

「え〜笑ってたし!照れんなよ〜!」

「照れてねェ!早く外出るぞ!!」


そう言ってスズの腕を取って歩き出す伏黒。

どれだけ冷たくしても、めげずに何度も自分を訪ねてくる明るい彼女の存在に、伏黒も少しずつ心を開いてきていた。

結果その日が、2人が初めてまともに会話をした日になったのだった。



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