-side 伏黒-

俺が中3に上がって間もなく…津美紀が呪われた。

正体不明、出自不明…全国に同じような被呪者がいるらしい。

何も分からないということだけが分かって、津美紀は寝たきりになった。

いつも笑って綺麗事を吐いて、俺の性根すら肯定する。

そんな津美紀も、俺が誰かを傷つけると本気で怒った。

俺はそれにイラついてた。事なかれ主義の偽善だと思っていたから。

でも今はその考えが間違いだって分かってる。

俺が助ける人間を選ぶように、俺を選んで心配してくれてたんだろ。

スズにも何回言われたかな…誰かに心配してもらえることは、有難いことなんだって。

悪かったよ、ガキだったんだ。

謝るからさ…さっさと起きろよ、バカ姉貴。


「クソッ、頭痛ぇ…!

(この八十八橋の呪いも重複してただけで、津美紀が寝たきりの原因になった呪いは解けてないだろうな。

 あとは指のことを虎杖に何て…あ、ていうかスズは大丈夫なのか…?顔…見てぇ…)」


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"…ぐ……み"

「…」

"め……み…!"

「(…ん…何か、呼ばれてる…?)」

"……み…!!"

「(この声…スズ、か…?)」

「恵!!!」

「! スズ…」

「良かった…!」


どこか遠いところから名前を呼ばれる感じがして…

それが今一番聞きたい声で聞こえてきて…

その声に引き寄せられるように目を開けると、見たいと思ってた顔が俺を覗き込んでた。

涙目で…心配そうな、でも安心したような表情を見せるスズがどうしようもなく愛しくて…

痛みとか吐き気とか…そういうの全部忘れて、俺はスズを抱きしめてた。


「おっと…!恵…?」

「…無事で良かった。」

「! ありがと。」

「まぁ…お互いボロボロだけどな。」

「そうだね〜でも生きてればいいよ。…頑張ったね、恵。」

「! …オマエが倒せっつーからだろ。」

「ふふっ。うん…!じゃあ治療するね。」


優しくそう言って、治療のために俺から体を離そうとするスズ。

それがすごく寂しくて、嫌で、離したくなくて…

俺はさっきより強くスズを抱き寄せた。


「恵〜」

「…何?」

「こんなにくっついてたら治療できないんだけど。」

「じゃあ治療しなくていい。」

「そういうわけにいかないでしょ。重症なんだから。」

「スズだって重症だろ。もう呪力使うな。」

「わ、私はさっき休んだから大丈夫なの。ほら、少しでいいから離れて?ね?」

「……ヤダ。今オマエと離れたくない。」


普段ならこんなこと絶対言わない。

でも今は自分でも驚くぐらい、何の躊躇いもなく言葉が出た。

ガキみてぇなこと言ってる自覚はある。

でも…スズなら受け止めてくれるような気がしたんだ。

その証拠に、スズは俺以上に強い力で抱きしめ返してきた。


「! スズ…?」

「分かった!このまま領域展開する。だから恵は、ゆっくり呼吸しながら私に体預けてて?」


声の感じから、スズが笑ってるのが分かる。

それは呆れたような笑いじゃなくて、いつもの穏やかで包み込むような方の笑顔に違いない。

つられて口元が緩むのを抑えられないまま、俺はスズに体を預けた。



to be continued...



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