数十分後、まずは伏黒が店に到着する。
突然呼び出されたことで大変不機嫌な状態の彼は、ぶっきらぼうな口調で同期へ声をかけた。
「おい、なんなんだよ。(スズいねーし…)」
「オッス伏黒ォ!!…あ、愛しのスズならもうすぐ来るわよ!」
「なっ…!」
「それより虎杖って彼女いるー??」
「は?」
「実はこの子がかくかくしかじか…」
「! つまりそういうことか!?」
「えぇ、そういうことよ!!」
「彼女はまずいないだろ。」
コーヒーを注文し、席に座った伏黒は開口一番そう言った。
小沢のためにその根拠を聞こうとする釘崎だったが、そのタイミングで呼び出していたもう1人の人物が到着する。
「ごめん!ちょっと迷っちゃった…!」
「! スズ。」「遅いわよ!早く座って!」
「分かった分かった!…恵も、呼ばれてたんだ。」
「おぅ。何飲む?」
「じゃ、じゃあ…オレンジジュース。」
「ん。(…顔あけーぞ。)」
「! あ、赤くないから…!」
「何、スズ?どうしたの?」
「えっ!?な、何でもない!」
注文を店員へ伝えると、伏黒は釘崎達に聞こえないよう口パクでスズに言葉を送る。
自分を意識し、過剰に反応するスズの姿に、伏黒は人知れず笑みを見せるのだった。
赤い顔で小沢の隣に座ったスズの注文が届くまでに互いの紹介を済ませ、釘崎は事の経緯を説明した。
「そういうことだったんだ〜!でもじゃあ聞きたいことって何?」
「虎杖に彼女がいるかどうかよ!伏黒はいないだろうって。で、根拠は?」
「急に東京来るってなって、特に困った様子なかったし。なっ?」
「それは確かに。コソコソ誰かとやり取りしてる感じもしないしね。」
「あと部屋にグラビアポスターが貼ってある。彼女いる奴ってそういうの貼らねーんじゃねぇか?相手嫌がるだろ。」
「伏黒って、女子の前でだけカッコつけてブラックコーヒー飲むタイプ?やめな?」
「俺の話を聞きたくて呼んだんだよな?いつも飲んでんだよ。」
「あははっ!でも野薔薇、恵中学の時は女子に人気あったんだよ?」
「おぃ、スズ!」
「え〜本当に〜?」
「あの、ちなみに好きなタイプとか…」
「あー背が高い子が好きって言ってたな。」
その言葉に、釘崎と小沢は目を見合わせて盛大に乾杯をした。
そしていよいよ本人を呼び出すべく、釘崎はLINEを操作し始める。
盛り上がっている女子達を横目に見つつ、スズと伏黒は揃ってトイレへと向かった。
と、そんな2人の背中に目を向けていた小沢は、ふと感じたことを釘崎へ告げる。
「…あの男性は、木下さんのことが好きなんですか?」
「分かりやすいでしょ〜?あれで隠してるつもりなのよ。」
「付き合ってるわけでは…ないんですか?」
「うん、それはないと思う。まぁあのスズの様子を見る限り、告白はされたんだろうけどね。」
それから少しして話題の2人が戻って来ると、場は一旦落ち着きを見せる。
だが次の瞬間…!
「あれ?スズと伏黒もいんじゃん。」
「はやっ!!(あ、しまった。私まだ虎杖に優子のこと言ってない!!)」
「何それ。」「悠仁、何持ってんの?」
「換金所探すのめんどいから景品交換しちゃった。」
「たくさん交換できたんだね!」
「うん!あ、これスズにあげる。このお菓子、好きだよね?」
「好き!ありがと。」
「(これだけの変化…絶対誰だか分かんない!!"誰?"なんて、久しぶりに再会した憧れの人に言われたくない台詞NO.1なんじゃない!?)
虎杖!!この子は…!」
「あれ、小沢じゃん。なにしてんの?奇遇〜」
「!」
元同級生の劇的な変化に驚く様子1つ見せず、当たり前のように名前で呼びかける虎杖。
そんな彼の対応に、現同級生の3人は10点の札を上げた。
だが一方の小沢はというと、何故かショックを受けたような表情で…
想いを伝えることなく、虎杖に見送られながら帰路につくのだった。
「本当にいいのか?せめて連絡先だけでも…」
「私やスズとは交換したし、まぁ大丈夫でしょ。」
「でも優子ちゃん…最後、悲しそうな顔してた。」
「…何かあったら連絡来るわよ。」
「なぁなぁ!せっかくだから皆で映画いこー!」
1人能天気な虎杖の提案で、この後4人は揃って映画館へと向かうのだった。
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