一通り夜蛾の話を聞き終えると、何やら考え込み始める五条。

他の3人がそろそろ声をかけようかと思ったタイミングで、当の本人が急にスッと手を挙げた。


「はい!」

「ん?何だ、悟。」

「この任務、リンも一緒に連れてく。」

「えっ!?」

「うん、いいアイデアかもしれないね。」

「だろ?」

「何言ってるんだ。駄目に決まってるだろ。傑も乗っかるんじゃない。」

「星漿体は女の子なんですよね?なら同性であるリンがいた方が安心すると思います。」

「そうそう、そういうこと!」

「それに…リンがいてくれた方が悟もいい動きをするでしょうし、何より面倒を見てくれるので助かります。」

「おい、それどういう意味だよ!!」

「何にしても駄目だ。この任務はリンにとって危険過ぎる。」


陰陽師であるリンは、五条達とは違い呪力が正の力を帯びた特異体質だった。

負の力を持たないリンは級が上の呪霊は倒せないため、彼女が出向く任務は陰陽師としての除霊任務と、低級呪霊の討伐に限られているのだ。

そんな彼女にとって今回の任務はレベルが高すぎると、夜蛾は言っているのだった。


「何かあったらどうするつもりだ。」

「俺と傑が一緒にいて、リンに何か起こるわけないでしょ。」

「悟も傑君もちょっと待って!私が行っても足手まといにな「なんねーから。」

「そうだよ。リンにはやってもらいたいことが山ほどある。」

「でも…」

「俺が絶対守ってやるから、安心して一緒に来い。なっ?」

「危険な目には遭わせないって約束するよ。」

「……分かった。よろしくお願いします。」

「ってことで!」

「はぁ〜…危ないと判断したらすぐに撤退させるからな。」

「りょーかーい。」「分かりました。」


横に座るリンの頭にポンと手を置き自信満々な笑みを見せる五条と、その奥で優しく微笑む夏油。

2人の頼もしい同期に説得され、リンもまた任務への参加が決定したのだった。


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教室を出た3人は、星漿体である少女が暮らすマンションへと向かっていた。

その道中にあった自販機で缶ジュースを2本買った五条は、1本を当たり前のようにリンへと渡す。


「ん。」

「おっ、ありがと!よく私が喉渇いてるって分かったね。」

「んなの顔見れば分かるわ。どんだけ一緒にいると思ってんだよ。」

「あははっ!確かに。」

「(リン以外の女性にもこういう気遣いができれば、悟はもっとモテるだろうにね〜)」

「…何だよ、傑。」

「別に。何でもないよ。」


息の合ったやり取りを見せる幼馴染コンビを穏やかに見つめていた夏油は、そう言って笑みを見せた。

揃ってキョトン顔を見せながら、リンと五条は缶ジュースのプルタブを開ける。

リンを間に挟んで、3人は言葉を交わしながら再び歩き始めた。


「でもさー呪詛師集団の"Q"は分かるけど、盤星教の方はなんで少女ガキんちょ殺したいわけ?」

「言われてみれば…盤星教は天元様万歳主義なんだから、星漿体の子が死んじゃったら困るんじゃ…」

「彼らが崇拝してるのは純粋な天元様だ。星漿体…つまりは不純物が混ざるのが許せないのさ。」

「なるほどね〜」

「だが盤星教は非術師の集団だ。特段気にする必要はない。警戒すべきはやはり"Q"!!」

「まぁ大丈夫でしょ。俺達最強だし。だから天元様も俺達を指名…何?」

「いや…悟、前から言おうと思っていたんだが、一人称"俺"はやめた方がいい。」

「あ"?」

「特に目上の人の前ではね。"私"、最低でも"僕"にしな。歳下にも怖がられにくい。」

「…リン〜傑がまたワケ分かんないこと言ってる〜」

「悟のことを思って言ってくれてるの!確かに一人称を使い分けるのは、私も大事だと思う。」

「はっ、嫌なこった。」


2人からのアドバイスをサラッと受け流し、五条はスタスタと歩を速める。

相変わらず言うことを聞かない同期の姿に、リンと夏油は顔を見合わせて苦笑を漏らすのだった。



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