星漿体の少女の部屋でソファに座り、リラックスした様子で携帯をいじっている夏油。

彼のすぐ傍には、呪霊に抱きつかれ焦っているコークンの姿があった。





第58話 懐玉 ー参ー





「ごめんて!!マジごめん!!この件から手を引く!!呪詛師もやめる!!勿論"Q"もだ!!そうだ!田舎に帰って米を作ろう!!」

「…?」

「聞こえてるだろ!!」

「呪詛師に農家が務まるかよ。」

「聞こえてんじゃん!!」


夏油の横に座り、2人のやり取りを見守っていたリンは、同期の発言にクスッと笑みを漏らした。

そんな彼女の様子に気づいた夏油が微笑みかければ、リンもまた優しい笑顔を見せるのだった。

高専コンビの反対側にあるソファには、星漿体の少女とその世話係の女性が眠っている。

リンによって傷の手当ても完了し、その寝息はとても穏やかだ。


「学生風情がナメやがって…!!だがここにはバイエルさんが来ている!!"Q"の最高戦力だ!!オマエらもそいつらも…」

「ん?悟から電話だ。…もしもし?」

『リン〜写真見た?』

「写真?」

『傑の携帯に送ったやつ!』

「傑君、悟から何か届いてる?」

「ちょっと待ってね…あーうん。これかな。」

「ふふっ。悟いい顔してるな〜」

「ねぇ、バイエルってこの人?」

「え?……この人ですね。」


夏油がコークンに見せた写真には、鼻血を出してノックダウンされているバイエルと全開笑顔でピースサインをしている五条が写っていた。

"Q"…最高戦力バイエル離脱リタイヤから組織瓦解。


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「悟、お疲れ様!当然ケガは…」

『してるわけねーだろ。』

「だよね!みんな上にいるから、悟も上がって来て?」

『え〜めんどくさい。』

「エレベーターですぐでしょ。文句言わないで早く来る!」

『…へ〜い。』


何だかんだ言っても、最後にはリンの言うことを聞く辺りは、御三家当主と言えど可愛いものである。

そうして部屋へ入って来た五条は、リンを見るなりガッと頭を掴んで顔を覗き込んだ。


「な、何…?」

「……ん。大丈夫だな。」

「へ?」

「過保護だね〜悟。」

「! べ、別にそういうんじゃねーから!」

「(ふっ。心配なら素直にそう伝えればいいのに。)」


言葉には出さないが、幼馴染を心配しているのが分かりやすく態度に出ている五条。

そんな彼を面白そうに見つめながら、夏油は幼馴染コンビを見守るのだった。



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