音楽室担当の黒井と別れた幼馴染コンビは、自分達も目的地へ向かって急いでいた。
道中、校舎の方から聞こえてきた大きな音に反応したリンが、音の方へ顔を向ける。
「今の…!傑君かな?」
「かもな。」
「大丈夫、だよね。」
「当たり前だろ。それより…礼拝堂ってどこだ?」
「えっ、分かって走ってたんじゃないの!?」
「んなわけねーじゃん。」
「もう…!何で下調べしとかないのよ。」
「だってリンがいるから。」
「!」
「俺が苦手なことはリンがやる。リンが苦手なことは俺がやる。ガキの頃からそうだっただろ。」
「うん、確かに。」
「なっ?俺らはニコイチなんだよ。で、どっち?」
「こっち!着いてきて!」
順番が逆になり、今度はリンが先導して中庭を走り抜ける。
そうして見えてきた礼拝堂の扉を、五条は両手でド派手に開け放った。
「天内!!」
「悟、声大き過ぎ…!」
「なっ…なな…」
「「「え〜!?」」」
「ん?」
五条達と一緒にいるところを友人に見られたくないからと護衛を避けていた天内にとって、これ程までに派手な登場は耐え難いものだった。
突然現れた五条の姿に、彼女の友人達は途端に色めきだす。
何せ入って来た男が、イケメンで長身の高校生なのだから…
グラサンを取って更に黄色い声援を浴びた五条の元に、音楽教師の女性がやってくる。
「困りますよ。身内とはいえ、勝手に入られては。」
「あーいや、緊急なもんで。スンマセンね。」「申し訳ありません…」
「…あとコレ、私のTEL番…って、そちらの女性は?」
「私も天内さんの「俺の彼女です。なんで番号はちょっと。」
「! そう…そう、よね。いるわよね、そりゃ…」
目に見えてヘコんでいる女性教師の脇をすり抜けて中に入ると、リンは天内の名前を小さく呼んで手招きする。
彼女を連れてこちらに向かって来る幼馴染の姿を確認した五条は、自分が望む行動を取ってくれるリンに笑みを見せた。
"行こう、悟!"という声に返事をして、五条は天内を片手に抱えて走り出す。
「ちょっと、何回私に彼女役やらせんのよ!変な恨み買うから嫌なんだけど…」
「しょーがねーだろ。イケメンを幼馴染に持った宿命だって!」
「はぁ〜…っていうか、理子ちゃんそれで運ぶの?」
「この方が走りやすい!」
「おい、離せ!リン、どうにかするのじゃ!」
「舌嚙むぞ。にしても賑やかな学校だな。」
「馬鹿者!!あれ程皆の前に顔を出すなと…!」
「呪詛師襲来。後は察しろ。」
「!」
「このまま高専いくぞ。友達が巻き込まれんのは嫌だろ。」
「ごめんね、理子ちゃん。少し辛抱してね。」
もの凄いスピードで走りながら会話をする幼馴染コンビと共に、天内は学校を離れるのだった。
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