別行動をしていた夏油と合流した幼馴染コンビ&天内。
そこに今まで行動を共にしていた黒井の姿はなかった。
自分のミスだと焦りを見せる夏油に、五条はいつもの飄々とした調子で声をかけるのだった。
第60話 懐玉 ー陸ー
「そうか?ミスって程のミスでもねーだろ。相手は次、人質交換的な出方でくるだろ。
天内と黒井さんのトレードとか、天内を殺さないと黒井さんを殺すとか。」
「うん…確かにそれが常套手段かも。」
「だよな。でも交渉の主導権は、天内のいるコッチ。取引の場さえ設けられれば、後は俺達でどうにでもなる。
天内はこのまま高専に連れていく。硝子あたりに影武者やらせりゃいいだろ。リン、結界頼むな。」
「それはもちろん。でも…「ま、待て!!」
"もう少し理子ちゃんのことを考えて"
そう言おうとしたリンの言葉を遮ったのは、話題の中心にいる天内だった。
自分1人だけが黒井救出作戦から外れることに我慢がならないようで…
「取引には妾も行くぞ!!リンはともかく、まだオマエらは信用できん!!」
「あぁ?このガキ、この期に及んでまだ…」
「助けられたとしても!!同化までに黒井が帰ってこなかったら?まだお別れも言ってないのに…!?」
「理子ちゃん…」
涙目でスカートを握り締めて訴える天内の背中をさすりながら、リンもまた五条に視線を向ける。
幼馴染故に、その目だけで彼女が何を言いたいか理解する五条。
そして少し考えるように間を置いてから、再び淡々と話し出した。
「…その内、拉致犯から連絡がくる。もしアッチの頭が予想より回って、天内を連れて行くことで黒井さんの生存率が下がるようなら、やっぱオマエは置いていく。」
「! 分かった。それでいい。」
「逆に言えば、途中でビビッて帰りたくなってもシカトするからな。覚悟しとけ。」
そうして睨むように天内を見下ろした五条は、リンの横を通る時にそっと耳元で囁く。
"これでいいだろ。"
そう言って少し笑みを見せる彼に、リンは満足そうにお礼の言葉と笑顔を向けるのだった。
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