「地方と東京じゃ、呪いのレベルが違う。」
五条がそう話していた頃、廃ビル内の釘崎は呪霊1体を難なく倒し終わったところだった。
しかしその場所にはもう1体呪霊がいたのだ。
弱いくせに、偶々遊びに来ていた子供を人質に取るような卑怯な奴が…
「レベルと言っても、単純な呪力の総量の話だけじゃない。
"狡猾さ"…知恵をつけた獣は、時に残酷な天秤を突きつけてくる。命の重さをかけた天秤をね。」
第5話 始まり
五条が話し終わって間もなく、廃ビルから突如飛び出してくる呪霊。
見た目も呪力も弱すぎるそいつを伏黒が祓おうとする。
「お。」「あっ!出てきた!」
「祓います。」
「待って。スズ、中の様子分かる?」
「…野薔薇の呪力が上がってます。何かやろうとしてるんじゃないかな。」
スズがそう呟いた直後、飛び出してきた呪霊は雄叫びを上げながら消滅した。
それを見て、1年担任は大変満足そうである。
「いいね。ちゃんとイカれてた。」
「じゃあ合格ですか?」
「だね。」
ニヤリとスズに笑いかけた五条は、もう一度廃ビルを見上げる。
その顔は、自分自身の夢の実現へ向けて、また一歩前進したことを喜んでいるようだった。
それからさらに数十分程経ち、ようやく虎杖と釘崎が廃ビルから戻ってくる。
しかし出てきたのは2人だけではなく、何故か幼い少年も一緒で…
事情を聞けば、さっき飛び出してきた呪霊の人質になっていたとのこと。
「そうだったんだ〜怖かったね。」
「…うん。」
「よく頑張った。偉いぞ!2人も大変だったね。」
「まぁな。でも屠坐魔もちゃんと使えたし、バッチリだったぜ!」
「私もよ!スズに戦ってるとこ見せたかったわ〜」
目線を合わせ、少年の頭を撫でながら声をかけるスズに、虎杖も釘崎も我先にと自分の頑張りを報告し始める。
その1つ1つに笑顔で相槌を打つ彼女は、皆に渡した白い勾玉のように温かく優しかった。
その後、おのぼりペアのいつまでも止まらない話を伏黒が無理やり打ち切り、待機組の3人で少年を送り届けることになったのだった。
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