自身の周りに結界を張り、木の陰に隠れながら様子を伺うリン。

呪霊から出てきた男は先程五条を刺したものとは違う刀を持ち、右肩から腰にかけて呪霊を巻きつけた出で立ちだった。

頭に疑問ばかりが浮かび、珍しく五条も戸惑いの表情を見せる。


「星漿体がいねぇな。できれば五条悟オマエはさっきので仕留めたかったんだが…ナマったかな。あ、いや違ぇか。リンがいたからだな。」

「気安くアイツの名前呼ぶな。…天内の懸賞金はもう取り下げられたぞ、マヌケ。」

「俺が取り下げたんだよ、クソ餓鬼。オマエみたいに隙がない奴には、緩急つけて偽のゴールをいくつか作ってやるんだ。

 周りの術師が1人も死ななかったのはクソだったが、懸賞金の時間制限がなければ、オマエは最後まで術式を解かなかったと思うぜ。」


"リンの忠告をちゃんと聞いとけば良かったのにな"

またも馴れ馴れしく幼馴染の名前を呼んだ男に、五条は少し怒りを見せながらも冷静に攻撃を仕掛ける。

だがそれを人間離れした速度でかわし、建物の屋根の上に降り立つ男の姿を見続けていたリンは、あることに気がついた。


「(あの人、まさか…!)悟!その人、呪力がない!!」

「(! そうか…何かおかしいと思ったら、そういうことか。天与呪縛のフィジカルギフテッド!!動きがまるで読めねぇ!!)」

「来るよ、悟!!」


武器を変えた直後、男は凄まじい勢いで五条へ向かって来る。

その変則的な動きは、常人にはほぼ回避不可能だ。

自身に近寄らせないように、術式で男を引っ張り吹き飛ばした五条だったが…


「(! いねぇ!!呪力がないから気配も読めない。勘頼り…なわけじゃねぇ。

 アイツに巻きついてる、物を出し入れできる呪霊…そっちの気配を追えばいい。……速すぎんだろ!!)リン!追えるか!?」

「追えるけど、そっちに伝える手段がない!!」

「(だよな…)仕方ねぇな…!リン、結界MAXにしとけ!!」


言うや否や五条はすぐに術式順転の出力を最大にして、辺り一帯を根こそぎ破壊した。

結果、彼の周りからは一切の遮蔽物がなくなり、とてつもなく見晴らしの良い戦場が出来上がった。

呪力をかなり消費し、全身から汗が噴き出している五条の耳に、突如聞こえてくる嫌な羽音…

そして次の瞬間、彼は無数の蠅頭に囲まれていた。


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五条の姿が見えにくくなり、木の陰から少し身を乗り出したリン。

そんな彼女の背後に忍び寄る1つの影…


「(悟…大丈夫かな。よく見えない…)」

「ちゃんと隠れてねーと襲っちまうぞ?リン。」

「! 嘘…いつの間に…!」

「ふっ。…アイツの最期、ちゃんと見とけよ。」

「(さいご…?)悟、そっち行った!!」

「(リンがいる方向からか…!クソっ…これじゃアイツの位置が分からん。)」


リンの声と術式を頼りに、男の動きを探る五条だったが、なかなか上手くいかない。

そしてその時は訪れる…

気配を消して背後に迫った男は、こちらへ振り返った彼の喉を持っていた呪具で突き刺した。

男の手に握られていた呪具は、特級呪具・天逆鉾あまのさかほこ

その効果は…発動中の術式強制解除。


リンの悲鳴と共に、五条悟の術式はいとも簡単に解かれた…



to be continued...



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