記録---2007年 9月 ■■県■■市(旧■■村)
任務概要---村落内での神隠し、変死…その原因と思われる呪霊の祓徐
・担当者(高専3年 夏油傑)派遣から5日後、旧■■村の住民112名の死亡が確認される。
・全て呪霊による被害と思われたが、残穢から夏油傑の呪霊操術と断定。
・夏油傑は逃走。呪術規定9条に基づき、呪詛師として処刑対象となる。
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「…は?」
「何度も言わせるな。傑が集落の人間を皆殺しにし、行方をくらませた。」
「聞こえてますよ。だから"は?"つったんだ。」
「…傑の実家は既にもぬけの殻だった。ただ血痕と残穢から恐らく両親も手にかけている。」
「んなわけねぇだろ!!」
「悟。俺も…何が何だか分からんのだ。」
「…っ!!!」
それから数時間後、五条の元に家入から1本の電話が入る。
内容は、新宿に夏油が現れたというものだった。
それを聞き、五条はすぐに移動を開始した。
そして人が溢れる雑踏の中、彼はかつての同級生と向かい合うのだった。
「説明しろ、傑。」
「硝子から聞いただろ?それ以上でも以下でもないさ。」
「だから術師以外殺すってか!?親も!?」
「親だけ特別というわけにはいかないだろ。それにもう私の家族はあの人達だけじゃない。」
「んなこと聞いてねぇ。意味ない殺しはしねぇんじゃなかったのか!?」
「意味はある。意義もね。大儀ですらある。」
「ねぇよ!!!非術師殺して、術師だけの世界を作る!?無理に決まってんだろ!!できもしねぇことをセコセコやんのを意味ねぇっつーんだよ!!」
「傲慢だな。」
「あ"?」
「君にならできるだろ、悟。自分にできることを、他人には"できやしない"と言い聞かせるのか?君は五条悟だから最強なのか?最強だから五条悟なのか?」
「何が言いてぇんだよ!」
「もし私が君になれるのなら、この馬鹿げた理想も地に足が着くと思わないか?生き方は決めた。後は自分にできることを精一杯やるさ。」
そう言って背を向ける夏油に、五条は術式発動の構えを取る。
"殺したければ殺せ"と言い放つ元同級生に、彼は手を下ろし静かに問いかけた。
「…今の全部、リンの墓の前で言えんのかよ。」
「言えるさ。そもそもリンが死んだのは何故だ?非術師を守ったからだろ。」
「アイツのためだって言ってんのか?」
「…君が気づいていたかどうか分からないが……私はリンのことが好きだった。」
「!」
「自分の好きな女性が、価値がないと考えている非術師を守って死んだ…頭がおかしくなるかと思ったよ。」
「だからってリンを理由にすんじゃねぇよ!」
「女性を好きになったことのない君に言われたくないな。」
これが彼ら2人の最後の会話となった。
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高専に戻り階段に座り込んでいた五条のもとに、担任である夜蛾が姿を見せる。
彼は静かに新宿での出来事を尋ねた。
「何故追わなかった。」
「……それ…聞きます?」
「…いやいい。悪かった。」
「先生、俺強いよね?」
「あぁ、生意気にもな。」
「でも俺だけ強くても駄目らしいよ。俺が救えるのは、他人に救われる準備がある奴だけだ。」
遠くを見つめる彼の目は、どこまでも寂しげだった…
to be continued...
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