2018年10月31日

その日、スズ達4人は完全なオフで…

19時から始める予定のハロウィンパーティーの準備で、みんなバタバタと忙しくて…

だが何やかんやと文句を言いつつも、顔は楽しさで溢れていた。


そんな4人に呼び出しがかかったのは、パーティーが始まってから20分程経った時のこと。

何故か姿を見せない五条を不思議に思いながら鍋をつついていた時のことだった。





第67話 渋谷事変 ー壱ー





記録---2018年10月31日 19:00

東急百貨店 東急東横店を中心に、半径およそ400mの"帳"が降ろされる。


"渋谷に原因不明の帳が降りたから、各自現地に向かえ。詳細はそこで補助監督から聞くように。"

伏黒の携帯に夜蛾から一報が入り、慌てて制服へと着替える4人。

伏黒は、七海や猪野がいる東京メトロ渋谷駅の13番出口へ…

釘崎は、禪院直毘人や真希がいる渋谷マークシティ レストランアベニュー入口へ…

虎杖は冥冥・憂憂がいる青山霊園へ向かうよう、夜蛾から指示が出た。

残ったスズはというと…


『スズは五条のところへ行ってくれ。』

「分かりました!渋谷のどこに行けばいいですか?」

『いや、渋谷じゃない。五条の執務室だ。』

「あ、まだ高専内にいるんですね。了解です。」


会話を終えたスズは伏黒へ携帯を返しながら、皆に今の話を聞かせる。

"一番に駆り出されそうなのにね〜"なんて会話をしてから、部屋も料理もそのままに、4人は指示された場所へと向かうのだった。


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執務室の前に到着したスズは、お馴染みの"コンッココン"というノックをする。

"どうぞ〜"と聞こえてきた声はいつもよりも、心なしかシリアスな雰囲気を含んでいた。

ドアを開ければ、目隠しを取ったオフモードの五条がこちらに笑顔を向けていた。


「ごめんな、急に呼び出して。」

「いえ!何か"帳"が降りたって…」

「うん。現時点で分かってること伝えたいから、とりあえずそこ座ってて。今お茶入れる。」

「ありがとうございます。」


温かい紅茶と共に戻って来た五条は、スズの前にカップを置いて隣に座ると、静かに話し始める。

今渋谷に降りている"帳"は、一般人のみが閉じ込められる"帳"であること。

内部は電波が断たれており、連絡手段が限られていること。

"帳"自体が術師を拒絶していないため、破壊作業が難航していること。

そして…


「中にいる人達が、"五条悟を連れてこい"って訴えてるんだってさ。」

「えっ、先生を?一般の人がですか?」

「そう。俺の名が知れてるのは、あくまで呪術界だけだ。パンピーが俺を名指しで指名してくることはあり得ない。」

「…誰かに言わされてる、ってことですか?」

「間違いなくね。それを踏まえて上は、被害を最小限にするために、俺が単独でこの件を収めることに決めた。」

「単独って…1人で行くってことですか!?」

「うん。」

「うん、って…!先生を指名してくるなんて、絶対厄介な相手に決まってます!」

「俺が負けると思う?」

「思わないです!でも…万が一何かあっても、誰も先生を助けられないじゃないですか…

 周りには一般の人もたくさんいるかもしれないんですよね?その人達を守りながら戦うことになったら、いくら先生でも…」

「…」

「……私も行きます。先生が相手に集中できるように、一般の人達は私が守ります!」


不安そうに俯いたスズを、五条は穏やかに見つめる。

それはまるで、次に彼女の口から出てくる言葉が分かっているかのようで…

だがスズが強い意志を持って発した言葉を聞いた瞬間、五条は少しツラそうな表情で彼女を抱き寄せた。


「…ごめん、スズ。今俺すげー卑怯な手使った。」

「へ?」

「本当は…一緒に来て欲しいって言おうと思ってたんだ。でも言ったら、俺の手でスズを危険な場所に連れてくことになる。

 オマエと一緒にいたい気持ちと、危ない目に遭わせたくない気持ちがぐちゃぐちゃになった。だから…スズが自分から言ってくれるように誘導した。ごめんな。」

「…あのね先生、私さっきの言葉すごく自然に出たんですよ。

 いつも守って、助けてもらってばっかりだから…今回は少しでも役に立てるかもって、すごく嬉しかったんです。」

「スズ…」

「だから、連れてってくれますよね…?」

「…相手がどんな奴でも、オマエには指一本触れさせないって約束する。必ず守るから…一緒に来て。」


視線を合わせて、優しくそう言えば、スズはいつもの明るい笑顔で"はい!"と返事をする。

そのいつでも変わらない想い人を、五条は今一度強く抱き締めるのだった。



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