夏にも関わらず、冷たい雨が降りしきる中、スズ達4人は英集少年院の門前に集まっていた。


「我々の"窓"が呪胎を確認したのが3時間程前。避難誘導9割の時点で、現場の判断により施設を閉鎖。

 "受刑在院者第二宿舎"…5名の在院者が現在もそこに呪胎と共に取り残されており、

 呪胎が変態を遂げるタイプの場合、特級に相当する呪霊に成ると予想されます。」


呪術高専の補助監督である伊地知から任務の詳細について聞いている間も、雨は一向に止む気配を見せなかった。

この日が4人にとってターニングポイントとなることを、今はまだ誰も知らない…





第6話 呪胎戴天





伊地知から出た"特級"という単語に、例の彼以外の3人はそれぞれ反応を見せる。

唯一そのヤバさを理解していない虎杖が疑問を投げかければ、伊地知や伏黒がバカにも分かるような説明を始めた。


「通常兵器が呪霊に有効と仮定した場合、例えば4級なら木製バットで余裕、3級なら拳銃があればまあ安心。

 2級・準2級は散弾銃でギリ、1級・準1級では戦車でも心細いです。そして最後の特級は、クラスター弾での絨毯爆撃でトントンという感じでしょうか。」

「ヤッベエじゃん。」

「本来、呪霊と同等級の術師が任務に当たるんだ。今日の場合だと五条先生とかな。」

「で、その五条先生は?」

「出張中。そもそも高専でプラプラしてていい人材じゃないんだよ。」

「あんな感じで、そんなに強いんだ〜私たちの担任って。」

「そりゃあね。悟先生あれでも特級呪術師だから。」

「この業界は人手不足が常。手に余る任務を請け負うことは多々あります。ただ今回は緊急事態で異常事態です。

 "絶対に戦わないこと"…特級と会敵した時の選択肢は"逃げる"か"死ぬ"かです。

 自分の恐怖には素直に従ってください。君達の任務はあくまで生存者の確認と救出であることを忘れずに。」


そう言って、伊地知は説明を締めくくった。

と、そこへ聞こえてくる女性の声…

どうやら刑務所内にいる息子の面会に来ていたようで、彼の安否を心配して駆けつけたのだ。

辛そうな表情を見せる虎杖を庇うように前に立った伊地知が、毒物が撒かれたという偽の情報を告げる。

事実をありのまま伝えれば、恐らくこの母親はもっと取り乱してしまうだろうから…


「スズ、伏黒、釘崎。助けるぞ。」

「…最善を尽くす。」「…」「当然。」

「"帳"を下ろします。お気をつけて。」


"闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え"

伊地知の呪文により、刑務所周辺に"帳"と呼ばれる結界が張られた。

辺りが急激に暗くなっていくことに、初めて見た虎杖は新鮮な反応を見せる。


「夜になってく!」

「"帳"…今回は住宅地が近いからな。外から俺達を隠す結界だ。」

「無知め。」

「この任務が終わったら、全部まとめて説明するね!3人で!」

「おう!頼む!」

「は?俺もかよ。」「何で私も!?」

「当たり前でしょ〜私達は4人でチーム1年なんだから!」

「「はいはい。」」「スズ、いいこと言うなー!」


口では素っ気ない返事をしているが、伏黒も釘崎もその表情は柔らかくて…!

虎杖は言わずもがな、良い笑顔を見せている。

こうして絆がまた少し強くなった4人は、スパっと頭を切り替え、いよいよ刑務所内へと歩を進めた。


「"玉犬"。呪いが近づいたら、コイツが教えてくれる。」

「ヨスヨス。」「今日も白は可愛いね。」

「行くぞ。」



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