電車から溢れ出てくる改造人間とそれから逃げる大量の人間達。
辺りは一瞬にして大パニックに陥った。
そのあまりにカオスな状況に震え、自分にしがみついてくるスズを落ち着かせながら、五条は考えを巡らす。
「(ヤケになったのか!?人間が減って困るのは呪霊の方だろ!?)」
そんな彼の元に、空飛ぶ絨毯のような改造人間に乗った真人が迫って来た…!
第70話 渋谷事変 ー肆ー
スズを抱き寄せる力を強くした五条は、無限の力を強めて相手の攻撃を受ける。
噂通り全く攻撃が当たらないことに、真人は面白そうに笑った。
そして彼の目は、最強呪術師が大切に守っている少女の方へ向けられる。
「ハハッ!マジで当たんない!!」
「(ツギハギ!!七海と悠仁が言ってた奴か!!)」
「真人…!!」
「スズちゃん、久しぶり〜!随分活躍してるみたいだね。」
「こんなことして…最低…!」
「それ褒め言葉〜!そうだ…人間のキショい所、1つ教えてやるよ。…いーっぱいいる所。」
五条の反撃をかわしながら、真人は笑顔でそう言った。
次の瞬間、ピシっという嫌な音がしたかと思うと、塞がっていたはずの吹き抜け部分から上の階にいる一般人が次々と落下してきた。
「先生、あれ…!」
「! チッ。さっき雑草が塞いでたとこが今更!?
(やっぱ上にも呪霊か、呪霊と組んでる呪詛師がいるな。渋谷に閉じ込めている一般人を次々に投入するつもりか!!)」
「あっちは私が行きます!」
「ダメだ!行くな、スズ!!」
「赤血操術"百斂"…"超新星"。」「無為転変"多重魂"…"撥体"。」
大量の人間が落ちてきている現場へ向かおうとしたスズを、五条は叫びながら慌てて止める。
直後、真人と脹相が同時に攻撃を放ち、師弟コンビの周りにはもの凄いスピードでぶつかってくる大量の血液とぐちゃぐちゃの改造人間が襲い掛かった。
思わず"ひっ…!"と声が漏れるスズを後ろに庇いながら、続けて攻撃を仕掛けてくる漏瑚の相手をする五条。
その怒涛のやり取りの中、呪霊と改造人間と一般人がごちゃ混ぜになって更なるパニックを生み出していた。
漏瑚や真人は考える。
五条悟は、虎杖と違い冷酷さを持ち合わせた人物。
ある程度の犠牲を前提として、自分達を祓いに来ると…
だがこの生者も死者も増える状況では、"ある程度"の天秤は機能しない。
最強の男が今することは領域を展開し、その領域内にいる呪霊と人間を皆殺しにして、まだこの場に投入されていない多くの人間達を救うこと。
だが自分の術式で人間を殺すことは、五条にとってあってはならないことである。
ピタっと動きを止めて考え込む最強呪術師を、呪霊達は嘲笑うように見つめていた。
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