とあるビルの屋上で、七海に向けたメッセージを大声で叫び続ける虎杖。
そんな彼の元に、数時間振りに見る大好きな少女が姿を現した。
「悠仁!」
「! スズ…!」
朱雀の背中からビルへと降り立ち、こちらに走って来るスズに、虎杖はパっと顔を輝かせる。
そして彼女以上に速いスピードで駆け寄ると、力強くスズを抱き締めた。
急なハグに動揺するスズを解放して目線を合わせた虎杖は、元気そうな同期に笑顔を見せた。
「無事で良かった!…先生のこと…大丈夫?」
「うん!死んだわけじゃないし、まだまだどうにでもなる!」
「だな!」
「心配してくれてありがとう、悠仁!」
変わらない優しい笑顔に、虎杖は照れ臭そうに返事をした。
それから再び叫び始めた彼を、スズは穏やかに見守る。
と、彼女の背後から複数の足音が…
振り返ったスズの頭にポンと手を置いたのは、こちらも久しぶりに姿を見る同期だった。
「恵!」
「大丈夫そうだな。」
「もちろん!恵は?ケガとかしてない?」
「あぁ。……すげー顔見たかった。」
頬に触れながら優しくそう言う伏黒に、スズはまたドキドキしてしまう。
場にそぐわず赤くなる彼女の姿に微笑みかけながら、伏黒は自分達に気づかずまだ声を張り上げている虎杖の元へ向かった。
続けて屋上へと上がって来た七海や、初めましての猪野からも、その身の無事を喜ばれたスズ。
彼女が五条と行動を共にしていたことを知っているが故に、皆が皆、スズのことを心配していたのだ。
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合流した5人は、各自の報告を聞きながら現状を把握していく。
特に虎杖の耳に突如現れたメカ丸からの情報は有益で、彼を中心に話は進んでいった。
「夏油さんが?本当ですか、スズ。」
「はい。少なくとも見た目は夏油さんでした。私は認めませんけど…」
『まぁ正確に言うと、夏油傑の裡にいる何者かダ。今渋谷駅構内は正に伏魔殿。
特級とソイツらが連れて来た呪霊、夏油の息のかかった呪詛師、そして改造人間と一般人。』
「確かにそれなら地下鉄の隣駅から攻めた方が速い。だがそのためにはまず"帳"を解かなければ。」
「そういえば、最初渋谷に来た時より随分"帳"が増えましたよね。」
「えぇ。この短時間で目まぐるしく状況が変わりましたから。」
『でもスズに関しては、どの"帳"も影響ないだロ。』
「え、そうなんですか?」
『今降りてる"帳"は、一般人と五条悟と術師に関するものだけダ。オマエは陰陽師として認識されてるから、どれにも該当しなイ。』
「なるほど…」
『とにかく緊急事態だ。マルチタスクで頼ム。』
メカ丸の言葉に、最年長の七海は今後の動きを思案する。
今傍にいるのは若く経験の浅い術師達。
元々しっかりした性格の七海だが、この状況では更にそれに磨きがかかる。
「(四の五の言ってる場合ではないか…)1級でしか通らない要請がいくつかある。
外に出て、伊地知君とそれらを全て済ませて来ます。3人にはその間に"術師を入れない帳"を解いてほしい。
猪野君。日下部さんや禪院特別1級術師もこの"帳"内にいるハズです。合流できた場合、現状を伝えて協力を仰いで下さい。」
「了解!」
「それから…2人を頼みます。」
「…はい!!」
「スズ。」
「はい!」
「君の治癒能力はとても貴重です。恐らく今回は治療班として動くことになると思います。すぐに学長に連絡を取って下さい。」
「分かりました!」
若者4人にそう告げると、七海はすぐさま外へ向かった。
スズもまた、すぐにスマホを取り出して学長と連絡を取ろうとしたのだが、不意に猪野が言葉を発する。
内容は、"五条悟がいなくなって困る2つのこと"だった。
「1つ、"五条家の失墜"。五条家は五条悟のワンマンチーム。五条サンが利かせていた融通で救われていた術師が数多くいる!!
虎杖、オマエもその1人なんじゃないか?あ、スズも陰陽師って言ってたよな?てことはオマエもか。」
「ッスね!!」「たぶん!」
「2人して軽いな。そういう連中がみーんな困ったサンになってしまい、最悪消される!!
そしてその2!"パワーバランスの崩壊"!!五条悟がいるからという理由でおとなしくしていた呪詛師、呪霊達が一斉に動き出す!!
その1で内輪がゴタついている時、その2の奴らとプチ戦争なんて起こってみろ。負けるぜ!!俺と七海サンはそう読んでる。負けたらどうなる?」
「少なくとも日本では、人間の時代が終わるかもしれないですね。」
「分かってんじゃねーか。いくぜ後輩ちゃんズ!!七海サンが戻る前に"帳"をブッ壊す!!」
「おう!」「はい。」
「スズ!オマエの力は皆の希望だ!絶対死ぬな!!」
「らじゃ!」
"五条悟を助けるぞ!!!"
渋谷中にいる味方全員の想いは、今この瞬間に統一された。
それぞれの任務を全うすべく、スズ達は動き出す…!
to be continued...
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