スズの必死の呼びかけにも虎杖は目を覚ますことなく、10本の指をその体内に入れられてしまう。
これで全20本ある宿儺の指のうち、少なくとも15本が取り込まれたことになる。
虎杖の様子を心配そうに見守っていたスズの耳に、突如2人分の声が聞こえてきた。
そちらに目をやれば、先程漏瑚によって殺されたと思われていた女子高生達が立っている。
漏瑚が再度彼女達を手にかけようと左手を伸ばすが、呪霊の手首から先は何故か失われていた。
と、同時に聞こえてくる低く重い声…
「1秒やる。…どけ。」
「「!」」
漏瑚へ恐ろしい程の威圧感で言葉を発した呪いの王・両面宿儺。
彼が発する圧倒的な邪悪さに死の恐怖を感じた漏瑚と女子高生2人は瞬時に距離を取り、スズと宿儺のやり取りを見守る。
「こちら側で会うのは久しぶりだな、スズ。」
「宿儺…!」
立ち上がった宿儺はいとも容易くスズの拘束を解き、彼女の名を呼びながら優しく頬に触れる。
"ケガはないか?"と問いかけてくる王に答えようとしたスズだったが、不意に足の力が抜けストンと座り込んでしまう。
驚いた表情を見せながら、宿儺もまた目線を合わせるように膝をついた。
「どうしたスズ。大丈夫か?」
「あ、うん。」
「? オマエ、何故震えてる。」
「わ、分かんない…何か急に…」
「そんなにアイツが怖かったか?」
「それは、もちろんある…けど、悠仁が死んじゃうかもとか、他の皆は大丈夫なのかとか…
しばらく1人で行動してたから、いろいろ不安だったのかも…でも、大丈夫。すぐ収まると、思うから…!」
グッと体に力を入れ、必死に震えを止めようとするスズ。
そんな彼女を愛おしそうに見つめていた宿儺は、ふわっとその体を抱き締めた。
「無理に止めようとしなくていい。止まるまで、いくらでもこうしててやる。」
「!」
「…スズ、今オマエは誰の腕の中にいる?」
「す、宿儺?」
「そうだ。俺がいる限り、オマエが傷を負うことは万に一つもない。当然1人になることもない。必ず守ってやるから、何も心配せず傍にいろ。」
この時スズは、渋谷へ来る前に五条が似たような言葉を伝えてくれたことを思い出す。
どちらもそれぞれの世界で最強と呼ばれる男達である。
故にその言葉が持つ安心感は計り知れない。
相手が呪いの王であると分かっていても、今のスズにとってはとても頼りになる存在だった。
スズがギュッとしがみつけば、宿儺は嬉しそうに抱き締める力を強くする。
「! 今日は随分可愛いことをしてくるんだな。」
「ち、違う!そういうつもりじゃ…!」
「照れなくても良い。…優しくする。」
「ちょ、宿儺…!」
「ついでだ。呪力も分けてやるから、大人しくしてろ。」
今にも押し倒しそうな勢いで迫ってくる宿儺を、スズは赤い顔で必死に止める。
気づけば、体の震えはすっかり収まっていた。
to be continued...
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