「次はオマエだ、呪霊。何の用だ。」

「用は…ない!!」

「何?」

「我々の目的は、宿儺…貴様の完全復活だ。」


スズを守るように立ちながら自分の話を聞いている宿儺に対し、漏瑚は更に言葉を続ける。

この機会を利用し、虎杖との間に宿儺優位の"縛り"を作れと…

今渋谷には彼の仲間が大勢いる、やり方はいくらでもあると、漏瑚は話を締めくくった。

そのとんでもない発言にスズが抗議するより前に、王が静かに言葉を発する。


「必要ない。」

「(えー?)」「宿儺…!」

「俺には俺の計画がある。だがそうか…ククッ。必死なのだな、呪霊オマエらも。

 指の礼だ、かかって来い。俺に一撃でも入れられたら、呪霊オマエらの下についてやる。

 手始めに…渋谷の人間を皆殺しにしてやろう。スズを含めた、2人を除いてな。」

「……二言はないな。」

「ちょっと宿儺!!人は殺さないって、さっき約束したでしょ!?」


今さっき自分と交わした会話を忘れたのかと、スズは宿儺を真っ直ぐに見つめて訴えた。

そんな彼女に少し笑みを見せると、宿儺はその耳元に口を寄せて囁く。


「オマエは、俺がアイツに負けると思ってるのか?」

「それは…思ってない、けど…もし万が一「ない。」

「へ?」

「スズがいる限り、その"万が一"は絶対に起こらない。」

「…根拠は?」

「オマエに傷を負わせない、オマエを1人にしない…そう約束した。」

「!」

「だから大丈夫だ。俺を信じろ。」


またも五条の姿がチラつき、スズは胸の奥がキュッとなる。

と同時に生まれるのは、宿儺の言葉への信頼感だった。

五条と同じく、彼の"大丈夫"にも相当な威力がある。

"分かった"と先程とは違った眼差しを自分に向けてくるスズに、宿儺は大変満足気だ。


「時にスズ、オマエ飛べる式神は持ってるか?」

「飛べる…あ、うん。朱雀っていう鳥がいるけど…」

「よし。ならそいつを呼び出す準備をしておけ。…始めるぞ。」


理由を問いかけようとしたスズの言葉を待たず、宿儺はそう言うと漏瑚がいる方へ攻撃を放った。

あまりに急で、あまりに強大な攻撃に、スズは思わずその場に立ち竦む。

だが次の瞬間、その体がふわっと持ち上げられた。


「うわっ…!す、宿儺!?」

「俺に掴まってろ。アイツを追うぞ。」


スズを俵担ぎにした宿儺は、漏瑚が逃げる方へもの凄いスピードで駆け出す。

訳が分からず、言われるまま宿儺にしがみついていたスズは、気づけばどこかのビルの上階にいた。


「(あれ?いつの間にこんなとこ…階段なんか上がってたっけ?)」

「スズ、式神を呼べ。外に出る。」

「そ、外!?ここ何階なのよ!」

「知らん。早く呼べ。」


またしてもスズの返事を待たず、宿儺は漏瑚を追いビルの外へと飛び出した。

胃が浮くような感覚に襲われ周りを見れば、自分が宿儺と一緒に落下しているのを知る。

スズが慌てて四獣・朱雀を呼び出した数秒後、2人は無事にフワフワした背中に降り立った。


「悪くない。やるな、スズ。」

「それはどうも…」

「スズ、オマエはコイツに乗って俺を追って来い。」

「え、あ、分かった…!」

「鳥、俺を見失うなよ?」

『キィー!』


朱雀の声にニヤリと笑みを見せた宿儺は、最後にもう一度スズを振り返る。

そしてペタンと座り込んでいる想い人の前髪を少しズラし、おでこへ唇を寄せた。


「えっ!?す、くな…何を…!」

「本当は口にしたかったが、初心なオマエには刺激が強すぎるだろ?今はそこで勘弁してやる。」

「い、今は…?」

「次は貰う。覚悟を決めておけ。」

「へ?」

「ふっ。じゃあ行ってくる。」


おでこを押さえながら自分を見上げてくるスズを楽しそうに見やってから、宿儺はふわりと朱雀の背中から飛び降りた。



to be continued...



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