降下しながら自身の式神・鵺を呼び出し着地すると、伏黒はすぐさま駆け出す。
一刻も早く釘崎を探し出し、この空間から脱出するために…!
「(死ぬなよ虎杖!!釘崎!!…生きててくれ、スズ…!!)」
一方さっきの部屋では、左手首から先がない状態のまま、虎杖が特級呪霊に対して必死の抵抗を示していた。
第7話 呪胎戴天 ー弐ー
釘崎が飲み込まれ、スズが意識を失った部屋の中は、恐ろしい程の静寂に包まれていた。
左手首から流れる血を止めるため、右手と口で切断箇所にベルトを締める虎杖。
この危機的状況において、彼はある人物を頼ろうとしていた。
「ここまで近づかれたらもう逃げらんねぇ。俺が死んだらオマエも死ぬんだろ。それが嫌なら協力しろよ、宿儺!」
「断る。」
「!!」
「オマエの中の俺が終わろうと、切り分けた魂はまだ18もある。
とは言え、腹立たしいことにこの肉体の支配者は俺ではない。代わりたいのなら代わるがいい。
だがその時は呪霊より先に伏黒を殺す。次に釘崎。アレは活きがいい…楽しめそうだ。
あーそれとスズのことだが…アイツのことを守れないオマエ達の傍には置いておけない。必ず俺の生得領域に連れて行く。」
「んなこと、全部俺がさせねぇよ。」
「だろうな。だが俺にばかり構っていると、それこそ仲間が死ぬぞ。」
宿儺がそう言った直後、特級呪霊はフッと呪力を吐き出した。
それは轟音と共に、虎杖と伏黒の間にある地面を抉り取る。
そのあまりの威力に2人は動揺を隠せずにいた。
「(呪術じゃない…ただ呪力を飛ばしただけだ。)」
「ケタケタケタ」
「伏黒!!釘崎連れて領域から逃げろ!!2人が領域を出るまで、俺が特級を食い止める。
出たらなんでもいいから合図してくれ。そしたら俺は宿儺に代わる。」
「はっ!?スズはどうすんだよ!?まだどういう状態かも確認してねぇんだぞ!」
「スズはたぶん肋骨が折れてる。もしかしたら頭も打ってるかもしれねぇ。しばらくは動かさない方がいい。」
「だったら俺達が脱出したところで、宿儺に代われねぇじゃねーか!!」
「…大丈夫。さっきのアイツの言葉聞いただろ。宿儺はスズを襲わない。」
「…だとしても、できるわけねぇだろ!!特級相手に片腕で!!」
「よく見ろって。楽しんでる。完全にナメてんだよ、俺達のこと。時間稼ぎぐらいなんとかなる。」
「駄目だ…!!」
「伏黒!!!…頼む。」
冷汗を流しながらも、真剣な表情でそう訴える虎杖。
昨日今日呪術界に入ってきた彼にこの場を任せるのは、あまりに荷が重い。
だがそれしか手がないのも事実…
伏黒は悩みに悩んだ末、虎杖の言う通りに動くことにしたのだった。
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