「小僧、スズに感謝するんだな」


その言葉を最後に、虎杖の顔からあの独特の文様が消え去った。

数時間振りに意識を取り戻した虎杖は、自分の中に一気に流れ込んでくる記憶と対峙する。

呪いの王が自分の体を使ってやってきた所業に、虎杖の精神は崩壊寸前まで追い込まれていく。

だがその中で度々感じる、温かく優しい少女の存在。

彼女は宿儺の傍で、常に虎杖を守るために行動していた。

その存在が、闇に引きずり込まれそうになる虎杖をギリギリのところで繋ぎとめていた。


「スズ…スズ…!お願い、目開けて…」


目の前で意識を失っている同期に呼びかけ続ける虎杖。

それはまるで、スズの声を聞かないと死んでしまうのかと思う程に必死なものだった。

そんな彼の想いに応えるように、スズの意識が浮上してくる。


「……ゆ、うじ…」

「スズ…!」

「…大丈夫、だからね」

「!」

「傍に…いる、から……大丈夫、だから…」


そう言いながら、スズは虎杖の頬に手を伸ばす。

弱々しく自分の頬に触れてくる彼女の手に、虎杖は素早く自身の手を添えた。

呪力が極限までなくなり危険な状態であるにも関わらず、スズの第一声は虎杖を気遣う言葉だった。

こんな状況でも自分のことを1番に考えてくれるスズの姿に、虎杖は胸がいっぱいになる。

だが同時に生まれるもう1つの想い…

それはとても悲しいものだった。


「…やっぱスズはすげーよ。いつだってたくさんの人を救ってる。俺も何回救われたか分かんねー。

 たくさん支えて、助けてもらって…今だって、こんなになるまで俺のこと守ってくれてさ…

 …なのに俺はスズに何も返せない。支えることも、助けることも、守ることもできない…むしろ奪ってばっかだ。

 こんな俺に、スズを好きになる資格なんてない。だから…あの時の告白は忘れて。もう俺のこと考えなくていいから。ごめんね、ありがとう」


ぼんやりとこちらを見つめるスズに悲しげな微笑みを向けると、虎杖はスッと立ち上がる。

そして…悲しい別れと因縁の相手が待つ渋谷駅へと向かうのだった。



to be continued...



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